消費税を増税するわけ~正しい情報・ゼロベースで論議をしよう

 2019年の10月から消費税が8%から10%に引き上げられそうです。同友会の立場は「消費税率の10%への引き上げを実施すれば消費の停滞を招き不況のさらなる長期化を招くことから引き上げは凍結する」と凍結論。さらに「『軽減税率』導入や適格請求書等保存方式(インボイス)導入による事務負担は中小・小規模企業に傾斜的に負担となるため採用を白紙に戻すか、凍結すべきである」としています。

 8%から10%に引き上げた際の家計の負担増は5兆円から6兆円と見込まれます。しかし、政府は、軽減税率がある上、教育の無償化による負担減があるから実質的な負担増は2兆円~3兆円とみています。政府は2兆円~3兆円の景気対策予算を計上して景気後退を防ぐとしています。

 しかし、軽減税率適用物品は2019年10月でなく、先取り値上げすればいいわけです。実に多くの食料品メーカーが「しれっと」値上げ、又は値上げ準備をしています。腹立たしいのは新聞各社。すでに日本経済新聞は2017年11月から4509円を4900円に8・67%も値上げしました。読売、朝日も近日中に値上げ予定であるといいます。つまり、値上げを先取りしているだけで、軽減税率を設けたからといって価格が抑えられることにはならないのです。いち早く消費を冷やすだけです。

 対応の難しさは、同友会会員の声からもうかがえます。同友会・関西ブロック調査からは、「電気、ガスなどのインフラを10%にして、新聞が8%というのは意味が解らない。軽減税率は不公平」(京都、ガス業)の声が。また、「BtoBの材料メーカー、素材メーカーは毎年のように値上げしてくるが、BtoCになるとなかなか価格に転嫁できない。また中小企業と大企業では購入量にも差がある為、より一層価格の開きが出てしまう」(兵庫、総合建設業)という、直接の影響を心配する声も多々あります。「増税後の消費の落ち込みは避けられないと思う。そもそも増税自体が必要なのか?できることなら増税の先送り(または増税そのものの廃止)を要請してほしい」(大阪、金属製品製造業)と増税そのものに疑問を投げかける向きもあります。

 従来ですと、増税しないと財政が破綻すると財務省筋などから「脅し」が入りました。曰く「政府の借金は1090兆円近くで、国民一人当たり約860万円で危機的状況である」と。

もちろん、経営者の感覚からすれば借金(債務)だけに注目してしまい資産を考慮に入れていないのはおかしいのでは、となります。その辺をすっきりさせる資料が先月発表されました。

 2018年10月に、国際通貨基金(IMF)から発表された「財政モニター報告書」です。これによれば、日本政府の負債額は国内総生産(GDP)の283%に相当するが、半分以上を日銀や公的年金などの、いわば公的機関が保有しており、資産と差し引きした「純資産」はほぼプラスマイナスゼロになっています。

 フェイク・ニュース(虚偽情報ニュース)が話題になっていますが、正しい情報とは何か、提供すべき報道機関のスタンスはどうあるべきか。論議をすべきときではないでしょうか。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2018年 11月 15日号より