【特集】金融円滑化法終了の影響と対応
客観的論拠のある経営計画を
(株)日本ビジネスクラブ 代表取締役 宮本 孝氏(東京)
中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法)が来年3月で期限を迎えますが、この法律が果たした役割や意義、成果、そして現在の状況や今後についての懸念などが十分に検証されたとは思えません。そういったことなしに打ち切ることに、私は戸惑いがあります。
企業業績は、国税庁の法人税申告実績でみても約75%が赤字です。今、円滑化法というセーフティネットをはずしていいとは決して思えません。
メガバンクの中には、返済条件の変更(リスケ)を行った企業に対して、「今後の返済計画を出してほしい」と言ってきているところも出てきています。今後、徐々に企業倒産が増えていくことが懸念されます。
求められる「自助努力」
一方で企業も円滑化法だけで助かるわけではありません。私自身も説いているのは「自助努力」です。
大事なのは経営改善計画、同友会で言うところの経営指針をしっかりとつくり、金融機関に示していくことです。しかも抽象的・主観的なものではなく、具体的・客観的論拠のある経営改善計画であることが必要です。同友会では長年、社会性・人間性・科学性のある経営指針をつくる運動に取り組んでいますので、まさに同友会の面目躍如の時とも言えます。
円滑化法は、返済条件の変更を申し出た企業に対する金融機関の協力義務と、実施状況の開示・報告義務を課したものです。円滑化法が終了して一番変わるのは、これまでは経営改善計画の作成が猶予されていましたが、それがなくなること。そして金融機関の開示・報告義務がなくなることです。
誤解していけないのは、返済条件の変更そのものがなくなるわけではないということです。これは法律によってできたものではなく、金融機関と債務者の契約の話です。また経営改善計画の提出などがあれば、金融機関は債務者格付けをいじらなくていいというのは、円滑化法でできたものではなく、金融庁の指導方針の中にもともとあったものだということです。円滑化法終了後も、きちんとした経営改善計画を背景に返済条件の変更を交渉することは、何ら支障がありません。
現在赤字の企業にとって経営改善計画をつくる上で大事なのは、「経営者の覚悟」です。「何としても黒字にする」という経営者の強い覚悟。そしてつまらない見栄を捨てることです。そうすれば知恵はいくらでもわいてきます。その覚悟を数字などの形で示すのです。
金融政策の充実をめざした運動を
1990年代後半の金融危機に対して、同友会は「金融アセスメント法」制定運動に取り組みました。その結果、地域密着型金融(リレーションシップバンキング)の推進や、「金融検査マニュアル」中小企業融資編の作成など、形は変わりましたが「成果」をあげることができたと私も自負しています。
東日本大震災で二重ローンが問題になっていますが、アメリカには「ノンリコースローン」(責任財産限定型ローン)があり、二重ローン問題はありません。今後はこのような制度の導入も含めて、より良い金融政策を求めていく運動を一層強めていくことが重要だと思います。