同友会ニュース

「会社法制の現代化に関する要綱試案」への意見

パブリックコメント「会社法制の現代化に関する要綱試案」への意見
2003年12月24日
中小企業家同友会全国協議会


はじめに

私たち中小企業家同友会全国協議会(略称・中同協、中小企業経営者4万名で構成、http://www.doyu.jp/)は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに取り組んで参りました。

私たち中同協は、これまでの会社法改正について中小企業の立場から意見表明してきました。1984年に法務省民事局参事官室から出された「大小会社区分立法等の問題点について」や1986年の法制審議会商法部会「商法・有限会社法改正試案」、1990年の「商法・有限会社法改正案」などに対して意見書を法務省等に提出してきました。その要点は下記の5点に集約されます。

1.中小会社の株主総会の手続き規定等の簡素合理化をめざす改正の方向には賛成できること。
2.株式会社及び有限会社の最低資本金制度の導入を行わないこと。
3.中小法人について、貸借対照表等の商業登記所における公開を義務づけないこと。
4.中小企業の計算書類に「会計調査人における調査」を強制することは、費用負担のわりには社会的有用性に乏しく、計算書類の信頼性の保証もなく、そのために利害関係者の不信感を逆に醸成することになりかねないので賛成できないこと。
5.「支配株主、取締役の責任の強化」については、中小企業は実質的に責任を負っており、特に法律で規制強化する必要はないこと。

2003年10月、法務省民事局参事官室より「会社法制の現代化に関する要綱試案」(以下、「要綱試案」)が公表され、パブリック・コメント手続が実施されたことにともない、私たち中同協もこれまでの会社法改正等への対応の経緯も踏まえて中小企業経営の立場から意見表明・提言を致します。関係各位の格段のご理解とご努力を望むものです。

1、中小企業の位置づけに関する基本理念の明示を

中小企業を日本経済の基盤と位置づけ、国民生活を支え雇用を担う存在として中小企業を支援・育成していくという基本理念を会社法制に据えるべきである

上記に述べたように、過去の商法改正の経緯は、中小企業の実態とはかけ離れた内容であった。しかも、例えば、最低資本金制度の導入、計算書類の登記所における公開の義務付け化、会計人による会計調査の義務付け化などのように中小企業に対して、規制を強化しようとするものであった。特に、1986年の法制審議会「商法・有限会社法改正試案」では、中小会社の「会社制度の濫用を防止し、無責任経営を排除する」という法理念が平然と説明されたことに対し、私たちは厳しく批判してきたという経緯がある。

有限会社と実態が同じで、譲渡制限株式会社でもある中小企業にとって、大規模・公開会社を想定した現行制度は規制が厳しく、経済活動の支障となっていることから、これを緩和させようという今回の見直し方向は評価できる。しかし、そもそも1974年2月の国会付帯決議で、大会社と明確に区別して「小規模の株式会社については、別個の制度を新設してその業務運営の簡素合理化を図り」「政府はすみやかに所要の法律案を準備して国会に提出すること」と決められていた。しかし、30年近く法制審議会において中小会社法制の議論が進められず、放置されたままであった。政府は各分野の中小企業の代表を集め、中小企業の実態を把握し、議論し、成案を得るという審議の具体化をはかる手立てをとってこなかったのである。

中小企業を「無責任経営」や「法人格濫用」の「取り締まり対象」と見るのでなく、中小企業を日本経済の基盤と位置づけ、国民生活を支え雇用を担う存在として中小企業を支援・育成していくという基本理念を会社法制に据えるべきであると私たちは考える。そのような中小企業の活力を引き出す環境を整備する法理念を謳うことが求められている。

中小企業基本法は1999年に改正され、公正競争確保の点からの政策基軸がないなど問題点はありつつも、政策の具体的目標を「独立した中小企業者の自主的な努力が助長されることを旨とし、その経営の革新及び創業が促進され、…その多様で活力ある成長発展が図られなければならない」(第3条)とするなど政策理念を積極型中小企業観に転換している。私たちは、この20~30年間の会社法制改正の経験を無駄にすることなく、中小企業経営の実態に則して「多様で活力ある成長発展が図られる」ように基本理念を明確にした会社法制改正を切に要望するものである。

2、要綱試案の個別項目に関する要望・意見

(1)「株式会社と有限会社の規律の一体化」

株式会社と有限会社の規律の一体化、有限会社の株式会社への吸収の方向性については、中小企業経営の実態に合ったものとして賛同する。

(2)最低資本金制度について

中小企業挑戦支援法の最低資本金規制の特例を活用した起業数は、10カ月間で6,700社が起業(うち「1円資本金会社」は268社)しており、その推移を見守る必要があるが、「粗製乱造」のそしりを免れない企業も散見される。社会の公器たるべき会社の道義的責任、企業存続の責任を表すものとして、一定の水準の資本金を用意すべきと考える。したがって、会社設立時における払込価額は株式会社についても、現行の有限会社と同額の300万円とするa案を支持する。

(3)譲渡制限会社における取締役の任期・人数・責任について

任期及び人数については、会社運営の健全性を確保する必要な人数、取締役会という会議体を構成するのに必要な人数として現行どおり3名でよいが、名義的なものでなく、実質的に責任を負う体制が求められる。
取締役の任期は、適格、不適格を見極めて随時交替できるようにし、任期の制限は設けない。取締役の任務懈怠責任は現行どおりでよい。

(4)決算公示を義務づける会社の範囲と公示する計算書類の範囲について

株式会社と有限会社で取扱いの違いがある決算公告に関してa案~e案の5案が提示されているが、決算公示は会社の自主的判断すべきであり、e案の「義務づけを廃止する」を支持する。また、公示する場合の計算書類の範囲は、貸借対照表もしくはその要旨のみでよい。

しかし、社員や株主との信頼関係はもちろんのこと、金融機関や主要取引先との信用を得るため、ディスクロージャーの重要性は高まっており、個々の企業が積極的に正確な情報を開示する経営の基本姿勢を確立すべきことは当然と考える。

(5)計算書類の公告における適正性担保について

従前、税理士法案に税務監査と助言義務があったが、今回の改正で、書面添付制度が導入された。書面添付に係る税理士の行為は、申告書作成目的に基づく適正性であり、計算書類そのものの適正性を担保するものではない。したがって、公開される計算書類の適正担保制度は、公認会計士の監査対象となる会社に限定すべきである。

3、定款自治の拡大・自主的な機関設計と私たちの姿勢

定款による自治拡大は、主体者である中小企業自らが自覚的に会社運営方法等をルール化し、そのルールに基づいて行動することを自ら規制するものであるから、従来以上に自由であるかわりに、自治による制約もあるという自覚が必要となる。したがって、中小企業自らが自覚的に検討できる気風の醸成が一方で必要になる。

私たち中小企業家同友会は、そういった中小企業の自覚の醸成と社会的責任を果たす中小企業家を育てていく団体としての重要な役割を担いたいと願っている。厳しい経営環境のもとにあっても、企業を維持発展させることは経営者の責務である。そのためには、企業の進むべき方向を明らかにし、社内の意思を統一して企業経営にあたることが不可欠であり、経営指針(経営理念・方針・計画)を成文化することが経営者の最も大切な義務・責任として、成文化の運動を私たちは進めている。

私たちは、社会的責任の重さを自覚し、企業の維持発展を基本として地域・社会の発展に貢献したいと願っており、そのような努力を励ます新会社法制を望むものである。

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