【10.05.26】宮崎同友会の口蹄疫への対応:義援金へのご協力を

現状―感染の拡大

 宮崎県川南町で発生した口蹄疫。宮崎県と宮崎同友会の現在の状況が中同協に寄せられました(25日現在)ので、その様子をお知らせするとともに、同会義援金への積極的なご協力を呼びかけます。

 宮崎県川南町では、発生農場から半径10キロメートルの牛や豚にワクチンを接種した上での全頭殺処分が決まりましたが、感染の拡大は止まりません。毎日、新たな疑いの農場がでてきて、対象となる地域(発生農場から半径10キロメートル)がどんどん広がっています。

 口蹄疫感染が拡大している地域(北から、都農町・川南町・高鍋町・木城町・新富町)は、県内では「児湯地域」とよんでいます。宮崎同友会の会員企業は10社ありますが、農業以外の事業者。畜産業を営む会員は県内で1社です。

 県から「口蹄疫非常事態宣言」がだされたのが18日。19日会員でに唯一畜産業を営んでいる(有)尾崎畜産代表取締役の尾崎宗春と宮崎同友会事務局の間で連絡がとれ、現場の様子や今必要なこと等を20日の理事会で報告してもらいました。

 宮崎同友会では、尾崎氏の報告を受けて協議した結果、現在下記の3点の対応を確認しました。

宮崎同友会理事会の確認事項

1.同友会として義援金口座を開設しての義援金の募集
集まった義援金は、現場で殺処分にあたる方々の支援金にあてるために開設された「宮崎県弁護士会緊急ボランティア支援基金」に随時振り込みます。

寄付金受入口座 宮崎銀行赤江支店(普)89748
口座名義    宮崎県中小企業家同友会

2.6月20日までの1カ月間、幹事会・理事会以外の活動の延期又は中止。
(口蹄疫は人に発症することはないものの、人を介して偶蹄類に広がることを懸念しての県の非常事態宣言の内容を踏まえての対応です) 。

3.同友会事務局出入口への消毒マットの設置。及び、幹事会を開催する場合の会議室出入口に消毒マットの準備。

(有)尾崎畜産 尾崎社長による報告

 以下、尾崎氏の報告の要旨の一部です。報告は1時間をこえ、報道で知る内容と現場で行っていることの乖離、行政と現場の乖離があり、「事実を知る」ことの大事さをあらためて実感するものでした。

・感染拡大を止めるには殺処分して埋却処理を促進するのが一番だが、そのための土地や人手が足りない。家畜を殺したら自分の土地に埋めるというのが法律。しかし、牛飼いは牧草地を持っているが、養豚業者は余分な土地を持っていない。土地を買え、埋めるための同意を近所にとれ、というのが行政の対応だった。

・陽性反応の検査結果はFAXで送られてくるだけ。殺処分をする人が来るのを待つだけの日々。しかし、育ててきた牛や豚が死ぬまでいいエサをやりづけるのが畜産業者の思い。

・行政の担当者は約3年で交替していて、プロがいない。10年前に宮崎県で口蹄疫が発生した時には、行政と業者の間で「このことはあの人に聞けばいい」という関係があったが、今はなくなってしまっている。

・全国からたくさんの義援金が県に送られているが、県としては、口蹄疫収束後の経済支援として配分することしかできない。しかし、いま、人を動かすためのお金がいる。そこで、宮崎県弁護士会の協力のもと「緊急ボランティア支援基金」を開設いただき、埋却処理に協力してもらえる人を全国から募ると共に、それらの人たちの宿泊所として被災農家に協力してもらい当面の彼らの生活支援にもあてていきたい。

 尾崎氏は、宮崎県の農業法人経営者協会の副会長でもあり、和牛1600頭を繁殖と肥育する畜産家です。社員数25名。父親がはじめた牧場を継いだのが24歳の時でそれから26年。氏の育てる「尾崎牛」はブランドが確立し、全国をはじめニューヨークやシンガポール等へも輸出していました。しかし、第2牧場(48頭肥育)が半径10キロメートル圏内に入ってしまい、24日に、自らの手でワクチンを打ったとのこと。残る1500頭を肥育する牧場まであと2キロメートルとその輪が迫っているそうで「あと2~3日内に10キロメートル圏内に入るだろう」と話していました。

 「10年前は500頭、社員は8名だった。尾崎牛のブランドを担保に、銀行から15億を借り入れて設備投資をし(父の代からはじめて)45年間かけて積み上げてきたものがゼロになってしまうが仕方がない。今は自分のことは二の次。畜産は宮崎の、そして国の宝だ。この口蹄疫は何としても宮崎県北部で止めなければならない。これ以上の蔓延を防ぐために必要なことを話して協力を募るのが、いまの自分の使命と考えている」とのこと。

川南町について

 川南町は、宮崎市の北約40キロメートルに位置する人口約1万7千人の町です。畜産を中心とした農業が基幹産業。戦後、国が食糧増産と雇用確保のため旧日本軍の軍用地や林野の開拓を計画。全国から5000人近くが入植して3000ヘクタールの農地を切り拓き、開拓者の出身地が全都道府県に及ぶことから「川南合衆国」とも呼ばれ、青森・十和田市、福島・矢吹町と並ぶ「日本3大開拓地」の1つとしても知られています。

 農業産出額は年間約200億円。このうち肉牛と乳牛、肉豚が約110億円を生み出す。全飼育頭数約15万頭のうち、約6割(16日現在)が殺処分対象となり、その分の経済の流れが消失。移動制限による経済損失や法人農場の従業員解雇、商工業の減収などを加えると、甚大な被害額となる。町幹部は「正確な数字ははじけていないが、町がなくなる危機を感じている」と事態の深刻さを語る。

 口蹄疫は津波のように多くの町民を巻き込み始めており、町税の減少は避けられない。被害農家は収入が途絶えるため、町税務課は「本年度は税を減免し、来年度以降も同様にせざる得ないだろう」と考える。町総務課財政管理係は「何戸の農家が再起できるのか。再開しても出荷までに最低でも牛が2年、豚は1年。町の経済に活力が戻るのはその後では。そうなると、町は2年と持たない」と最悪のシナリオが頭をよぎる(宮崎日日新聞5月18日から)。

中小企業団体としての真価が問われる時

<他の会員から寄せられている報告>
・「イベントの中止で県外客200人分の予約がキャンセルになった」(延岡市のビジネスホテル業)
・「人通りが少なくなり、売り上げが1割ダウン」(都農町のスーパー経営者)
・「鹿児島県での建設工事の契約をしていたが来てくれるなと言われた」(都城市の建設業)
・「得意先が立ち入り禁止区域の先にあり、仕事(工事)に行けない」(宮崎市の水処理業)

 20日の理事会以降、宮崎同友会の各支部役員会で現場のことについて、尾崎氏に報告してもらっています。尾崎氏の思いを知り、事実を知ることで、人ごと(畜産業に限った問題)ではないと深く理解し、自分(自社)にも何かできることはないかと一人ひとりの会員が考え、動き始めています。

 口蹄疫の感染拡大を食い止めるのがまず第一の課題ですが、その後におそってくる大きな波の方が気がかりであると同時に、地域の経済を支える中小企業団体としての真価が問われる時とし、宮崎同友会では取り組んでいます。

*口蹄疫に関する情報はこちら(宮崎県庁サイト)