政策・主張

2004年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言

【2】 2004年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言

1.円滑な資金供給と中小企業・地域に優しい金融システムの構築を

(1) 中小企業・地域が健全かつ社会的に望ましいかたちで発展していくために、「円滑な資金需給」「利用者利便」などの視点から必要な情報を収集して金融機関の活動を評価し、公開する「金融アセスメント法」(仮称)を法制化すること。

(2) ペイオフ解禁は、中小企業にかかわりの深い地域金融機関の預金の流失を促進させ、中小企業への資金パイプを狭めるばかりでなく、地域金融機関の存立を危うくする懸念がある。2005年からペイオフ完全解禁が予定されているが、預金保険法によるペイオフ発動の実効猶予措置を直ちに宣言すること。

(3) 2001年3月まで実施された「特別信用保証制度」の一部を変更し、これまでに返済した金額の範囲内で当該企業への再融資を認める制度を創設すること。

(4) 貸し渋り・貸し剥がしが横行する金融環境の中で、制度融資・信用保証制度は中小企業にとって大きなよりどころとなっている。その充実のため次の措置をとること。

  1. 中小企業の不良債権処理での金融機関の一方的な整理回収機構(RCC)送りによる倒産を防止するため、当該企業の債務が信用保証付融資の場合、債務者の意向を尊重し、企業と金融機関、信用保証協会の三者の協議によって対処する措置を講ずること。
  2. 2003年4月より、保証料率が0.3%引き上げられたが、低金利の中、一般保証料率を1.3%とすることは保証料の負担感を突出させる。引上げをやめ、むしろ保証料免除措置の導入を検討すること。また、連帯保証人の要らない制度融資の拡充を進めること。
  3. セーフティネット保証制度における連鎖倒産防止の1号認定は官報告示日から実施されるが、取引先倒産(民事再生法を含む)後、官報掲載まで日数がかかり、融資実行まで対応しきれないこともある。倒産等の事実が明確な場合、官報告示前に前倒しでの実施ができる措置を検討すること。
  4. 2003年2月から実施された「資金繰り円滑化借換保証制度」の利用に際しては、公的制度として中小企業の資金繰りを改善するものであり、条件変更を一律に条件緩和債権扱いにしない措置を取ること。
  5. 信用保証協会が行なう「信用保証」の重要な役割は、担保力に乏しい中小企業金融の円滑化をはかり、中小企業を健全に育成するという信用補完機能にある。したがって物的担保優先主義を克服した信用保証協会こそが本来の姿であり、保証条件の緩和をさらに進めること。「無担保無保証人融資」は、1250万円に引き上げられたが、段階的に3000万円まで拡充すること。
  6. 中小企業創造活動促進法や中小企業経営革新法に基づく許可、承認を得た企業に対する制度融資に関して、従来型の審査ではなく、計画の内容を適切に評価した制度運用を行うこと。

(5) 不良債権早期処理の中小企業への影響を最小限に抑えるため、次の措置をとること。

  1. 不良債権問題への金融機関の対応では、借り手企業の経営健全化への支援、債務者区分のランクアップ支援を第一義とすること。金融機関が中小企業に経営指導を行い、金利減免や返済猶予をする場合、貸出債権の債務者区分の格下げをしないこと。
  2. 倒産防止共済制度は、共済金の貸付の償還期間を5年から10年に延長すること。また、共済の口座を設けている当該金融機関に延滞がある場合、共済金貸付と他の貸付が強制的に相殺されている。これは、倒産防止の緊急性と本来の趣旨に反するものであり、国として差押禁止条項を設けるなど制度の機能の確保につとめること。
  3. 事業者と金融機関の融資上の取引トラブルを調停あっせんする緊急の窓口・機関を金融庁又は都道府県に設置すること。当面、金融庁の「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」を拡充し、寄せられた情報の公開と相談案件の仲介機能を持つようにすること。
  4. 中小企業が倒産した場合、個人の最低限の財産保障と再起できる条件を整備するため、破産法の改正など個人保証の有限責任化を進めること。また、経営者が倒産した際に家族との生活を維持し、再起ができるための共済制度などの創設を検討すること。当面、小規模企業共済制度を加入資格要件(従業員20名以下等)の緩和などの拡充をはかること。また、倒産時などで共済の口座の当該金融機関に延滞がある場合、差し押さえされない措置など制度の整備をはかること。

(6) 「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」の拡充を行うこと。

  1. 資産査定の検査対象外とする基準を与信額2千万円から5千万円程度の債務者まで拡充すること。バーゼル銀行監督委員会は、小規模事業融資については与信額合計100万ユーロ(約1億2千万円)未満である場合に限り、当該与信を内部格付手法におけるリテール与信の枠組みで取り扱うことを認めており、日本も同様の拡充をすべきである。
  2. 自己資本比率算出での中小企業貸出リスクウェイトは、不動産担保部分のリスクウェイトを住宅ローン同様に50%に下げること。バーゼル委員会の新BIS規制では、標準的手法のリスクウェイトを住宅ローンは50%から40%に、与信額1億円程度未満の中小企業向け融資も100%から75%に下げられるとしている。これは2006年末から適用が開始されるとしているが、日本においては前倒しでの導入をはかること。
  3. マニュアル別冊を発展させ、中小企業向け別基準の金融検査マニュアルをつくること。

(7) 民間金融機関では拘束預金が依然として継続されている。これは、「取引上の優越的な地位の濫用」にあたり、独占禁止法に違反するおそれがある。公正取引委員会、全国銀行協会連合会などを通じての監視と指導の強化を改めてすすめること。

(8) 「貸し渋り」は、政府系金融機関の役割の大きさを改めて実証した。政府系中小企業金融機関を整理統合することは中止し、むしろ設立時の原点に立ち返ってそれぞれの金融機関の特性、補完的役割を生かして育成する政策方向をとること。

2.新しい内需を喚起し、中小企業を活性化させる景気回復策を

(1) 中小企業が地域で取り組んでいる新規事業、事業転換、グループ化、ネットワーク化などのさまざまな「新しい仕事づくり」――それらは市場としては小さいが市場を深く掘り起こす多種多様な事業であり、地域経済を活性化させ国民生活を豊かにすること、地域雇用を維持し拡大することに結びついている――を有効な景気回復策として位置づけて、積極的に支援すること。

(2) 観光・余暇、教育、医療、安全性など人間の活動能力の発展をはかる社会的ニーズや防災対策、環境保全、高齢化・福祉、地域づくりなど社会生活の中から新しい内需を誘発しようとする中小企業を戦略的に支援する地域産業政策を展開されたい。

(3) 国は、地域再生産業集積(産業クラスター)計画を進めているが、これまでのような「上から」の産業政策の発想を転換し、文字通り「地域経済の実態を踏まえ、地に足がついた経済産業政策」としなければ、成果を期待できない。地域に根ざした産業クラスター形成とするため、「世界市場を目指す中堅・中小企業」3000社、19プロジェクトに限定的に取り組まれている計画をより地域でオープンな参加を促すものにすること。

(4) 健康保険や介護保険、年金、雇用保険など2003年度からの社会保障関連の負担増は目白押しであり、消費意欲をさらに低下させて不況を一段と深刻なものとする。加えて、中小企業の事業主負担の増大は中小企業経営への打撃ともなる。当面引上げを中止すること。

(5) 特許審査料の2〜3倍の値上げが検討されているが、デフレ時代に突出した料金値上げであり、国がめざす「知的財産立国」の流れに逆行するものであるので見直し計画を中止すること。また、特許審査料の減免制度の要件を大幅に緩和し、中小企業の負担軽減をはかること。さらに、特許出願を取り下げた場合、審査に着手していなければ特許審査料を返還すること。また、2003年度より郵政公社化が実施されたが、第三種郵便等の値上げは行わないこと。

(6) 従来型の公共事業から、環境にやさしくしかも地域を豊かにし、地域雇用に果たす役割も大きい、生活基盤整備・社会福祉・環境保全・防災重視の生活整備型・自然再生型の公共投資へ抜本的に転換させること。国の官公需の中小企業向け発注は、閣議決定の中小企業への官公需発注比率を現行水準の約4割から6割に拡大すること。景気回復をはかるために、地域経済の実情に応じた発注を行なうとともに、一定の質をもつ公共工事価格を適正価格のナショナルミニマムとして位置づけて、モデル化すること。また、技術的に可能な限り分離・分割発注の拡充、一定金額以下の発注を中小企業に限定する制度の導入、施工準備金・前払い制度の活用、発注の平準化推進、官公需適格組合の積極活用を図ること。

(7) 国は大震災に備えた防災対策事業を自治体と協力して以下の措置を強力に推し進めながら、中小企業の参加、仕事づくりにつながる事業とすること。(1)既存建築物の耐震診断を大規模に実施すること。関連して、耐震診断費と防災改修工事の助成措置及びセーフティローン斡旋制度の金利助成の拡充措置をはかること。(2)防災向けの耐震防災住宅の建設の研究と普及・支援を図ること。(3)都市防災不燃化事業の対象地域の拡大と個別住宅の防災不燃化を推進すること。(4)公立学校など公共施設の耐震改修の推進。

(8) 防災対策と都市美観の向上による観光促進策、そして内需喚起の「起爆剤」として、電柱の地下埋設工事の全国一斉工事を計画すること。各都市が指定地域を設定し、地元工事業者が参画する電柱埋設工事を一斉に実施すること。

(9) 安心と活力のある少子高齢化社会をめざし、(1)移動入浴車やデイサービスの充実、在宅型介助機器の公的リース、老人施設・障害者施設のマンパワーの充実に努めること。(2)バリアフリー住宅化の推進や民間グループホーム建設への支援など高齢者が安心して暮らせる環境づくりを図ること。また、巡回サービスなどセキュリティや福祉サービスの水準を緊急に向上させること。バリアフリー住宅・福祉機器開発を行なっている中小企業への支援(開発促進、市場の開発)を行うこと。(3)中古住宅市場の整備など実物資産を有効活用した豊かな消費生活を実現すること。(4)良質な賃貸住宅が大量に供給されるよう制度の見直しや助成措置を講じてライフサイクルに応じて住宅選択の幅が拡大するよう整備すること。

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