政策・主張

2004年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言

【2】 2004年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言

4.市場創造と経済再活性化を支える税制

(1) 法人税のあり方について

(1) 留保金課税の停止…留保金課税は、2003年度から3年間、資本金が1億円以下で自己資本比率が50%以下の中小法人に適用が停止された。このことは、私たちの要望の反映ではあるが、内部留保の積み増しは経営の根本に関わる問題であるので、時限措置でなく恒久的な措置として明確にすべきである。

(2) 政策減税=租税特別措置法の整理縮小…2003年度の景気刺激策として試験研究費を中心に減税策が作られた。中小企業への一定の配慮はされているが、需要を作り消費を喚起する本質的な景気刺激に程遠いだけでなく一層税制を歪めるものになっている。将来の景気回復時に税収の大幅な改善を図るためにも、政策的税制を整理縮小(租税特別措置法の整理縮小)し、税収確保の筋道をつけるべきである。

(3) 累進税率の導入…深刻な歳入欠陥、税収不足の中で国際競争力を理由に法人税率の一層の引き下げが叫ばれている。法人税において累進税率を提案する理由は、財源確保ということだけでなく負担すべき能力のある企業が財政上の負担をするという社会的な要請として考えなければならない。応能負担原則は法人税においても実現すべき原則であり、次のような累進税率の導入を提言する。すなわち、所得1500万円まで15%(資本金1億円未満)、所得5000万円まで25%、所得5億円まで34.5%、所得5億円以上40%。ただし、個人にたいして法人が相対的に有利になることを是正するために、現行の法人税を個人事業も対象に含めた企業税(仮称)に改めることも税率と合わせて検討すること。なお、このような累進税率を導入した場合でも、財政にたいしては中立すなわち増減税ゼロになる。

(4) 交際費課税の全額損金算入…交際費課税については、2003年度改正から中小企業(資本金5000万円超1億円以下の法人)の損金算入制度の定額控除限度額が0円から400万円に引き上げられた。さらに現在中小企業の損金算入枠が20%削られているが、その枠を10%に引き下げた。この措置は中小企業の実態に合わせた一定の改善として評価できるが、中小企業の交際費損金算入枠は、本来の「全額損金算入」に戻すべきである。さらに、交際費の範囲を明確にして、中小企業の経営の実態に即した交際費課税になるように改善を図るべきである。

(2) 消費税について

(1) 消費税の税率引き上げに反対する…日本経団連をはじめ政府・与党内にも消費税の税率引き上げに積極的な意見が多い。税率引き上げの主な理由は、少子高齢社会における社会保障費の需要増大に備えるためであるというが、実際には消費税は公共事業費や国債の返済・利払いに充てられてきた。仮に消費税の税率を引き上げたとしても、膨大な国債の返済に充てられ、社会保障費に回る可能性は少ない。また、大型間接税=消費税は所得税の納税義務のない低所得者にまで同一の負担率を求める不公平税制であり、福祉財源として最も相応しくない税制である。加えて、消費税の税率引き上げは更なる景気後退をもたらす。景気回復のためには消費税の税率を引き上げるのではなく、反対に消費税減税を行ない国民・中小企業者の負担を軽減すべきである。

(2) 中小事業者特例の縮小に反対する…政府・与党は消費税の透明性を確保する(益税をなくす)として、事業者免税点を3,000万円から1,000万円に、簡易課税適用上限を2億円から5,000万円に引き下げる方向を打ち出した。新たに課税事業者に巻き込まれる小規模事業者はおよそ150万、簡易課税制度が適用されないこととなる事業者がおよそ56万社と推定される。これらの中小事業者は消費税を完全に転嫁する制度上の保証がなく、益税どころか、消費税を自己負担することとなる。その結果、大量の滞納が発生するおそれがある。現に消費税の滞納税額は毎年7,000億円(消費税収入のおよそ7%)も発生し、約100万の事業者(全納税義務者のおよそ45%)が滞納している。これは消費税が完全に転嫁できていない証拠である。免税制度や簡易課税制度は完全転嫁ができない中小事業者の生業権を保証するための特例であり、憲法の要請する応能負担原則に適う制度である。特例の縮小は中小零細事業者に実質的な増税をもたらし、資金繰りを圧迫し、倒産の引き金となりかねず、長引く不況を一層深刻なものにするので、中小事業者特例の縮小は行わないこと。

(3) 消費税の内税化に反対する…与党税調は、「消費者に対して商品の販売等を行うに際し、その商品等に係る消費税の額を含めた総額を明らかにすることを義務付ける」としている(2004年4月1日から適用)。これは現在、デパートやスーパー等が消費税を外税方式によっていることを改め、内税方式(総額表示方式)にするというもの。総額表示方式とは定価を示したうえ、そのうち消費税が○○円含まれていると表示する内税方式で、税が価格に埋没し、消費税が見えにくく不透明になる。内税化は実務的にも価格の付け替え作業などの煩瑣をもたらす。すでに日本チェーンストア協会は流通業界の要望として、「消費者は外税に慣れているし、便乗値上げも考えられなくもない」として内税に反対の意向を表明している。内税化は税率引き上げの前提となり、安易な税率引き上げを招くことになるので反対である。

(3) 所得税について

(1) 配偶者特別控除の廃止反対…政府・与党は配偶者特別控除廃止を2004年1月1日から実施するとしている。配偶者特別控除は1986年10月の「税制の抜本的見直し」において、大型間接税導入による家計の負担軽減措置として導入されたものである。政府税調は配偶者特別控除の廃止理由として、この制度が男女共同参画社会形成の観点から好ましくなく、女性の社会進出を阻害しているからだという。だが、女性の社会進出を阻害しているのは、不況による労働市場の減少と社会環境整備の遅れにある。もし配偶者特別控除を廃止するなら、その分を基礎控除に回すべきである。配偶者特別控除の廃止は中・低所得者に税負担をもたらす各種所得控除廃止のための先鞭的役割を果たすものであり、景気を一層後退させる結果となるのでその廃止に反対する。

(2) 給与所得者を中心とする所得税大増税の方向に反対する…中・低所得者層に対する所得税大増税の方向は配偶者特別控除の廃止をはじめとして次々に用意されている。与党税調は次年度以降の検討事項として、給与所得控除の縮減、生命保険料・損害保険料控除の廃止、年金課税の強化、社会保険料控除の縮小などをあげている。このほか、特定扶養控除、同居老親控除、勤労学生控除、寡婦・寡夫控除の廃止、老年者控除の縮小などを視野に入れ、課税最低限の大幅引き下げを図るとしている。とくに給与所得控除額の圧縮による増税は、給与所得者の手取額を減少させ可処分所得を小さくする。その結果、消費意欲は一層低下し景気はますます後退する。景気を回復させるためには国民の多数を占める中・低所得者層の懐を暖めることが得策である。そのためには、所得再分配機能を持つ超過累進税率構造を強化し、中・低所得者層の減税を行うべきである。

(3) 年末調整制度の廃止…給与所得者に対する年末調整制度は、従業員のプライバシーを侵すなど違憲性がある制度であり、また、企業の事務負担や経済的負担も大きい。給与所得者は個々の実情に基づき、事業者と同様、必要経費を実額によって控除することが望ましいが、仮に給与所得控除制度を残したとしても、年末調整を行うか否かを選択制にするとともに、給与所得控除と実額経費控除についても選択制にすることとする。

(4) 中小企業の事業承継について

政府税調は2003年度の相続税・贈与税の改革において、高齢化の進展に伴って次世代への資産移転が大幅に遅れてきているとして、生前贈与の円滑化に資するため相続税・贈与税の一体化の措置を導入するとしている。この措置が中小企業の事業承継を円滑に行う上で有効なものと考える。しかし現行の最高税率で課税されている相続は年間10件ほどに過ぎず、ごく少数の資産家に限られている。個人所得税を補完し、富の再分配を図り社会の公正化・活性化を促進するという相続税の役割からすれば、現行の累進税率を維持すべきである。また富の再分配機能のためにはこれ以上課税ベースを拡大すべきではなく、むしろ現行の基礎控除を大幅に引き上げ、一定水準の資産家に限定して課税すべきである。さらにアメリカの97年度税制改正に習い、わが国においても中小企業の事業承継が円滑に行われ日本経済の健全な発展に寄与出来るよう抜本的な相続税の改革が必要である。

(1) 相続税の基礎控除を1億円程度に引き上げること。政府税調は中期答申で「平成10年では死亡者100人当たり約5人(5.3%)」が対象になっているといっているが、高度成長によって地価が騰貴する前の昭和30年代は100件の相続事例のうち相続税の対象になるのはわずか1件(課税対象割合1%)。その後、地価高騰により相続税の対象となる割合が著しく増大した。富の再分配を必要とする一部の資産家に対する税である相続税の本来の姿に戻すためにも基礎控除を1億円程度に大幅に引き上げること。

(2) 事業用資産については、事業を承継するという条件の下で事業承継猶予制度を設けて10年以上事業を承継した場合、一定額を免除すること。事業承継は、事業自体の存続を前提にするから取引価額で資産を評価すること自体が問題である。事業用資産については、事業を継承するという条件の下で以下のような事業承継猶予制度を設けること。

イ)事業用資産については通常の評価額とは別に「事業承継価額」で評価する。
ロ)事業承継者は事業用資産を「事業承継評価額」で評価した税額を納付し、通常の評価額で評価した場合の税額との差額は猶予される。
ハ)10年以内に事業を廃止した場合は当該差額を納付する。
ニ)10年以上事業を承継した場合には当該差額を免除する。

 上記中期答申では、農地に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例は、農業政策の視点から、法律上、その利用・転用・譲渡が厳格に制限されていることなどから認められているとしているが、中小企業の事業承継にもこのような制度が必要である。なお、アメリカやドイツでは5年〜10年の事業承継を条件とした事業承継制度を導入している。

(3) 自社株式評価には企業の利益水準をベースにした収益還元方式による評価方法を導入すること。株式評価については、自社株式は流通性がなく資金化が困難であることに加えて企業の存続を前提にすると、企業の利益水準に基づいた収益還元方式による評価が適切である。純資産価額方式の評価において、土地の評価は上記の「事業承継価額」とすることが、収益還元方式へ移行するまでの経過措置として残されている。

(5) 地方税制について

(1) 外形標準課税の導入反対…商工団体の反対運動の中で、課税標準を付加価値だけでなく所得割や資本割りとしたり、資本金1億円超の法人に限定し一定の緩和措置をとっているが、イ)担税力のない赤字法人にも大きな負担を強い、中小企業の7割に達する欠損法人に深刻な問題をもたらす、ロ)報酬給与額などを課税標準とする「賃金課税」であり、企業の人的投資を妨げて雇用抑制する、ハ)規模が小さい法人ほど税負担倍率が大きくなるという問題点の解決にはなっていない。従って、不況をさらに深刻にし、日本経済の活力削減につながる重大な欠陥がある税制であるので導入を中止すること。

(2) 固定資産税・都市計画税は担税能力に応じた方式に…固定資産税の地価公示価格に連動した評価は、多くの訴訟や自治体の反対決議に見られるように連年の地価下落の状況にもかかわらず税額が増額するなど非現実的である。固定資産においても負担能力に対応した収益還元による評価方式に徹底すること。さらに、都市居住・営業が確保されるためには都市計画と結びついた適切な軽減措置をとること。また、都市計画財源のために徴収されている都市計画税の存在意義を明確にして適切な都市計画財源として企業の経営環境確保のための都市形成に使用すること。

(6) 税務行政の執行に関する手続規定の整備について

(1) 納税者権利立法を…総務庁行政監督局(当時)は、国税庁に対し、行政監察に基づき改善を勧告した(2000年11月)。先進諸国では、納税者権利立法を中心とした税務行政の改革が行われている。よって、税務行政の公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資する観点から、早急に国税通則法の改正を行うこと。

(2) すべての税務取扱通達の事前手続、事前・事後審査、国会での関与と、事務連絡等を公表すること。

(3) 租税法規の解釈に関する事前表明手続(アドバンス・ルーリング、クロージング・アグリーメント)を制度化すること。

(4) 文書による調査の事前通知、理由開示及び終了通知を徹底すること。

(5) 国民に周知されぬままKSK(国税総合管理)システムが全国展開され、電子申告制度の導入に移行された。早急に自己情報の公開とプライバシー保護措置を講ずること。

(7) 納税者番号制度について

導入に向け、具体的な成案を得るべく早急に検討を開始するとあるが、具体的な活用の仕方、個人のプライバシーの保護と厳格な各種の規制など、種々の問題が十分検討されない上、周辺法の整備も不充分であり、採用すべきでない。「住基ネット」の住民票コードの利用は行わないこと。

(8) 税の使途に関する情報公開

納税者としての社会的責任がある立場から、租税収入の中身と租税の使途、予算、決算の対比を正確に知る権利がある。単年度会計制度の弊害として、公共事業費、防衛関係費等の後年度負担と消化主義がある。企業会計と同じく発生主義による複式簿記会計方式及び財産目録の明示、または後年度負担項目については脚注に詳述すべきである。財政公開は憲法第91条に定められていることからも、国の財政情報を制度的に整備すること。

(9) 低金利国債への借り換えと累増にストップを

税収、国債発行額ともに戦後最悪の水準で、国債依存度は44%、国と地方の長期債務残高は686兆円で国内総生産(GDP)の1.4倍にもなり、欧米諸国に例のない水準となっている。利率の最高は3.3%、加重平均で2.68%だが、公定歩合が0.1%という超低金利の時期にあっては、「国債規則」に基づき、低利借り換えで利払いを圧縮すること。また、不要・不急の大型公共工事を凍結し、抜本的に見直すこと。

このページの先頭にもどる

携帯用二次元バーコード
携帯対応について

更新情報RSS