政策・主張

2004年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言

【2】 2004年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言

8.労働環境改善と人材育成、雇用対策の拡充のために

(1) 安心して働ける社会保障制度の構築と労働環境の整備

(1) 企業年金や中小企業退職金共済を、労働移動が発生した場合でも勤労者が個人単位で継続できるような制度に改めること。また、厚生年金基金ではバブル崩壊後、多くの基金が資金運用に苦しんでおり、とくに中小企業が集まって設立しているいわゆる「総合型厚生年金基金」では長引く不況下で、基金の将来設計の見通しが立たないばかりか、経営状況の悪化に苦しむ加入事業者も多く、基金からの脱退や、基金そのものの解散を考えるところが増えている。しかし、解散時や脱退時に加入事業者が補填しなければならない積み立て不足額の大きさから、解散もできないジレンマに陥っている。社員が安心して働けるようにと、本来国が行ってきた代行部分の資金運用も含め企業が引き受けてきた厚生年金基金が機能不全状態にあるのは、制度設計時には国自身が予測できなかった経済環境の激変によるものであり、代行部分の積み立て不足に対する国の支援措置を検討すること。

(2) 企業が新分野に進出したり、急激な技術革新等に対応するため、企業内での労働能力向上のための教育訓練が不可欠となっている。現在行われているキャリア形成助成金など教育訓練への助成制度を、教育訓練を就業時間外で行わざるを得ないなどといった中小企業の実態にあわせて柔軟に活用できるものとするとともに、申請手続きの簡素化をはかること。また、新たな制度創設にあたっては、中小企業の実態にあった活用しやすいものとするため、立法過程から中小企業の意見を反映させるものとすること。

(3) 中小企業の経営実態に配慮し、労働時間短縮のための環境整備を推進すること。中小企業の時間短縮については、自企業の企業努力だけではなく関連企業・業界の協力、取引慣行等の転換が必要要件となっている。そこで、イ)省力化投資等に積極的な支援策を講じること、ロ)取引慣行を見直して業種ごとに労働時間短縮を促進する施策を行うこと、ハ)発注方式等取引改善指導事業、下請代金支払遅延等防止法、下請中小企業振興法の運用強化等、労働時間短縮のために下請取引適正化施策の一層の強化を図ること。

(2) 育児・介護休業制度と保育所の拡充等による女性の社会進出支援

少子・高齢化社会において、育児・介護休業制度を実効性あるものとするために、雇用保険法による休業給付金の拡充を行うこと。さらに、利用者のニーズに対応した保育施設・学童保育所の増設・充実、在宅介護支援制度の充実を図り、女性の社会的進出を支援すること。特に、産休あけ、育児休業あけの保育所の拡充や出産育児により長期に就労から離れる女性に対して社会復帰をはかるための教育訓練など施策を充実させること。

介護休業制度では、休業の認められる期間が一家族当たり最長3カ月となっているが、介護の実態とは離れており、短時間勤務との組み合わせや期間の上乗せなど、それぞれの介護の実情に合わせた実効性のある介護休業制度とすること。休業給付金の支給も、その実情に合わせ、支給日数の延長や給付額の引き上げなど一層の拡充を図ること。また、介護者が昼間安心して働けるよう、保育所のように高齢者を預かる「宅老所」の普及・促進を図ること。

(3) 高齢者と障害者の就労環境の整備と雇用の促進

(1) 公的機関が高齢者の多様な就労ニーズを高齢化社会のテンポにあわせて実現させるための環境整備を図ること。リタイヤした中高年齢者の技能・スキルを中小企業経営や地域づくりに活かす施策を検討すること。

(2) 高齢者の日常生活を支援するために、住宅、設備の修理や改修、掃除などを公的に援助することにより安価に利用できる制度を行政と中小企業とがタイアップする方式で設けること。その際、能力や技能のある高齢者を優先的に活用すること。

(3) 中小企業における障害者雇用を促進させるような支援策の拡充と利用手続きを簡素化すること。障害者雇用を実際に職場で支援する「ジョブコーチ派遣制度」は、職場実習の場合も利用できるようにするなど、一層の充実を図ること。特に、イ)ジョブコーチの養成と増員を急ぐこと、ロ)障害者とジョブコーチのペア雇用を進めること、ハ)社員にジョブコーチの資格を取らせる場合に援助すること。

(4) 障害者作業施設設置等助成金などの適用にあたっては、障害者雇用を前提として施設の設置や整備を行った場合、雇用前であっても助成金の支給を実施すること。障害者雇用の現状は、大企業より中小企業の方が進んでいる。障害者の雇用状況を発表する際は、実情が正確にとらえられるように、法定雇用率適用外の従業員規模55人以下の企業における障害者雇用の状況も必ず発表すること。

(4) 雇用対策の拡充について

失業率の上昇は続き、今後も不良債権の早期処理等により失業者の急速な増加が予測されており、セーフティネットと教育訓練機能の強化が急務となっている。雇用のミスマッチをなくし、再就職を支援するため、職業訓練を前提に失業保険の支給額と支給期間を拡充すること。また、創設された若年者安定雇用促進奨励金(トライアル雇用制度)の対象年齢の拡大や支給額などの拡充を図ること。

9.清潔な政治・行政の確立と武力によらない国際貢献、国際交流の推進

(1) 政府の役人・政治家と民間業者との贈収賄事件や高級官僚による不祥事は、あとを絶っていない。政治腐敗を招く根元である政党への企業献金・団体献金は禁止すること。政治・行政に対する国民の信頼を回復させるために、公務員倫理の確立と厳正な実行、高級官僚の関連業界への天下り禁止、国民への情報公開などについて、さらに真剣な努力を行うこと。

(2) 米国での同時テロは、沖縄の観光業界など日本の観光業界に多大な被害を与えたが、米英の対イラク戦争でも甚大な影響が心配され、平和裏に経済活動に専心できる環境づくりが国の内外で切望される。日本国憲法の平和理念にのっとり、国際社会の平和のために日本の役割をいっそう強化すべきである。国際紛争は国連を通じて平和裏に解決する努力が求められている。

(3) 外国人研修生受入事業の充実として、外国人研修生受入れにたいする支援措置の拡充ならびに研修生の入国手続きの簡素化等環境整備を図ること。また、外国人労働者の宿泊施設、住宅の提供、住宅の斡旋、労災保険や健康保険等の制度の充実を図るとともに、社会生活に対する相談センターや日本語ほかの知識を習得するための研修機関を整備すること。

10.中小企業を経済発展と雇用の主役に位置づける「中小企業憲章」の制定を

(1) APEC中小企業大臣会合が積み重ねてきた中小企業の重要な役割についての共通認識をさらに発展させ、アジア各国での中小企業の発展と経済共生の理念の確立に努めること。2002年の第9回APEC中小企業大臣会合共同閣僚声明では、「政策環境の改善」として「資金調達のアクセス改善、人材育成の強化、技術移転の促進」などを課題としているが、さらに「中小企業の不利是正と健全な競争ルールの確立」や「起業文化の普及」、「教育体制整備と職業訓練政策の拡充」、「雇用と技能・知恵を守り、地域社会を支える中小企業の役割重視」などの課題も盛り込み、EUの「欧州小企業憲章」(リスボン憲章)やOECDの「中小企業政策に関するボローニャ憲章」を参考にして、日本政府はアジア経済の発展に対応した政策イニシアチィブを発揮すること。

(2) 日本政府は、中小企業を国民経済の豊かで健全な発展を質的に担っていく中核的存在として位置づけ、日本経済に果たす中小企業の重要な役割を正確かつ正当に評価することを通して、中小企業政策を産業政策における補完的役割から脱皮して中小企業重視へと抜本的に転換することを「宣言」し、日本独自の「中小企業憲章」を制定すること。また、「憲章」の主旨を地方公共団体にも徹底するため、「中小企業振興基本条例」を未制定の自治体に制定を促すこと。

(3) 「中小企業憲章」で検討する理念や課題を実現するためには、中小企業に関連する予算を急速に拡充することが求められている。国の総予算に占める中小企業対策費の割合は現在、0.23%と1%に満たない極めて低いレベルが継続しているが、この比率をとりあえず1%以上にすること。

(4) 地方分権によって地域経済の活力を地域の中から築いていくことが出来るように、権限委譲に比べて遅れている財源委譲を速やかに実施すること。2002年6月の政府税制調査会答申では、「地方税の改革の方向については、地方税の充実確保の一環として、…税源移譲を含め国と地方の税源配分のあり方について根本から見直すべきである」としており、国から地方への税源移譲こそが直ちに取り組まれる必要がある。国税の一部を地方税に回す財源委譲措置が適切である。

(5) 市町村合併は自主的に行うべきものであり、強制しないこと。人口が一定規模に満たない市町村を、「小規模市町村」位置づけ、その権限を制限・縮小することは絶対に行わないこと。

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