中小企業の倒産・廃業を避け、雇用と日本経済を守るために
新型コロナウイルスに関する第6次緊急要望・提言

 私たち中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに努めて参りました。
 新型コロナウイルス感染症は、既に各業界に未曾有の規模で極めて深刻な影響を与えておりますが、全国的な患者数急増や首都圏における緊急事態宣言発出などにより、その影響がさらに拡大することが懸念され、多くの中小企業が倒産・廃業の危機に追い込まれかねない切迫した事態となっています。 現下のきわめて厳しい環境下にあっても、中小企業の多くは支援施策等も活用しながら社員の生活と雇用を守るために必死の努力を続けています。しかしながら、影響の長期化も予想されることから、支援施策を一層拡充していくことが求められています。雇用と地域社会を守り、日本経済崩壊の危機を防ぐためには、中小企業の維持・発展が不可欠です。以上の観点から、私たちは下記のような政策の実施を緊急に求めるものです。関係各位の早急なご協力、ご支援をお願いします。

1.経済・社会活動の本格的再開・継続のために、検査体制の抜本的充実とワクチンの早期普及を図り、医療体制の崩壊を断固として防ぐこと

 新型コロナウイルスやその変異種の感染拡大を一刻も早く終息させ、経済・社会活動の本格的再開・継続を図ることが中小企業の維持・存続のためにも不可欠である。そのためにもPCR検査体制の抜本的拡大・強化を行い、あわせてその実施状況や陽性率などに関する地域別の情報を広く国民に提供すること。またその検査の結果を踏まえて、エリアや業種などを限定した自粛要請と補償を行うこと。同時に、医療機関に対する経営面での支援および医療従事者への支援を強化すること。また普及が望まれる安全性の高いワクチンについては、すべての国民が早期に接種できるようにすること。

2.自粛・営業時間短縮・休業による売上減少などに対する補償の充実

(1)自粛・営業時間短縮・休業要請などに対する補償を万全に行うこと

 緊急事態宣言発出に伴う営業時間短縮や休業などの要請は、その実効性を高めて感染拡大を抑止するためにも、補償と一体となっていることが必要である。要請によって生じた売上減少などの中小企業の損失に対しては、国として十分な補償を行うこと。補償に際しては、地域の実情に応じて柔軟に活用できる制度とすること。また、業種・業態を特定する場合は、関連業も含めること。

(2)罰則規定を設ける際には十全な補償を条件とすること

 特に特別措置法の改正により休業や時短要請などに応じない事業者への罰則を設ける際には、格段の配慮と十全な補償を行うこと。

(3)政策決定に際しては十分な説明と終了条件などの見通しを明確にすること。

 営業時間短縮や休業要請などに係る政策を決定する際には、中小企業や国民の意見を十分に聞いた上で、科学的根拠および終了条件の明確な見通し等について丁寧な説明を行い、多くの国民が納得して協力できるようにすること。

3.給付金の拡充・強化

(1)持続化給付金の継続・拡充

 影響の長期化を踏まえ、1回限りではなく継続的に支給できる制度とすること。事業収入減少要件を緩和(拡充)し、より多くの企業を対象とすること。事業所単位での申請や店舗数等に応じた上限の引き上げなどを行うこと。創業して間もない企業も利用しやすい制度とすること。1月15日までとしている申請期限を延長すること。

(2)家賃支援給付金の拡充

 売上減少要件の対象期間を昨年の3~4月まで拡大すること。貸主が借主の代表取締役の場合や、貸主と借主とが親族関係にあっても適正な家賃支払いを行っている場合などは対象にすること。1月15日までとしている申請期限を延長すること。

(3)手続きの一層の簡素化・迅速な支給

 中小企業の給付金や補助金等の申請手続きについては、ある程度の簡素化が行われつつあるが、一層の簡素化を進めるとともに、申請手続きをサポートする仕組みを強化すること。金融機関にも積極的な支援態勢を促すこと。

4.雇用調整助成金特例措置の大幅延長を

 雇用調整助成金の特例(緊急対応期間)については2月まで再延長されたが、昨今の全国的な患者数増加傾向や首都圏における緊急事態宣言発出などの状況を勘案すると、今後、影響が一層長期化することも懸念される。そのため、ワクチン接種の普及等によって感染症終息の見通しがたつまでの期間、あらためて大幅な延長を行うこと。

5.きめ細やかな金融支援施策の拡充・強化と円滑化を

 全国には多種多様な中小企業が存在することを踏まえ、その多様性に対応できるきめ細やかな金融支援施策の一層の拡充・強化を進めること。また円滑に制度運用が進むよう、金融機関の対応を促すこと。

(1)長期資本性ローンの拡充

 「新型コロナ対策資本性劣後ローン」については、金利の低減や、協調融資時の保証協会の保証制度活用および期限の延長や借り換えが行えるようにあらため、金融機関が一括償還まで資本とみなす制度とすること。また借り手が返済期限を決められる長期資本性ローン(永久劣後ローン)を創設すること。

(2)「コロナ特別短期貸付」および「コロナ特別短期保証制度」の創設

 今後、影響の長期化などにより追加的に資金調達が必要となる局面も想定されるため、迅速に資金を調達することができる貸付制度・保証制度として「コロナ特別短期貸付」「コロナ特別短期保証制度」を創設すること。

(3)きめ細やかな金融支援施策の拡充・強化

 実質無利子・無担保融資制度の継続、既往債務の条件変更や借り換えの促進、新継続型短期保証制度の拡充、手形貸付や当座貸越枠の拡充等を図り、前例に囚われないあらゆる手法によるきめ細かな金融支援を継続・強化すること。あわせて金融機関にも積極的な支援体勢を促すこと。

6.税金・社会保険料などの減免

 現状では「持続化給付金」「家賃支援給付金」「雇用調整助成金」等は課税対象となっているが、これらはそもそも納税の前提となるはずの経営の継続そのものが困難に陥った企業を支援することを目的にしている。したがって上記給付金などは非課税にすること。
 また、地域経済の底割れを防ぐため、売上減少などの影響を受けた企業に対しては社会保険料の免除や法人税等の減免(一例として、賞与に関わる社会保険料の一定期間の免除など)を実施すること。

7.豪雪地帯の除排雪を担う自治体および中小企業への支援強化

 記録的積雪が観測されている豪雪地帯においては、自治体の財政状況が悪化していることに加え、コロナ禍も相まって除排雪がいっそう困難な状況にある。豪雪地帯の除排雪に関わる自治体の財政支援や地域間での連携支援、除排雪を行う中小企業の担い手確保や設備機器確保への一層の財政支援を行うこと。

8.政府として中小企業・小規模事業者を支援することの重要性を国民に訴えること

 政府は2019年に「中小企業の日」および「中小企業魅力発信月間」を設け、その目的を「中小企業・小規模事業者の存在意義や魅力等に関する正しい理解を広く醸成する機会を国民運動として提供していくため」としている。その趣旨に照らし、政府は、コロナ禍を乗り切ろうと奮闘している中小企業、小規模事業者に対して「1社もつぶさない」「雇用を守る」という覚悟のもと、従来以上にスピードを上げて支援の取り組みを進め、その重要性を国民に訴えること。

以上

2021年1月8日
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜泰久