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中小企業家しんぶん

コラム「円卓」のバックナンバー

●2003年 12月 25日号

▼くり返えす年の瀬ではあるが、区切りをつけて思いを深め、新たな目標づくりをするには良い節目でもある。一見平穏に見えるせせらぎでも、小さな渦があり、岸辺の生物がそこで身をもがいていたりする

▼内外の情況は決して平穏とは言えない1年であった。年の瀬に一番気にかかることはイラク派兵であろう。なし崩しに取り返しのつかない滝つぼに落ち込んでしまった経験を、日本人はわずか70年ほど前の日々の中で体験している。現象的にわずかな差でも、方向の違いは許されない。一時停止は必要な知恵である

▼イラク派兵に当たり死亡慰労金が増額され、元防衛庁幹部は「生命を金で買うのか」と批判している。祖国日本への侵略に対し直接防衛に立ちあがるのではないことは、明白である。「派兵に当たっては万全を期す」とは、弔慰金の積み増しなどにあるとすれば、派兵候補家族の心情は痛ましい

▼「新たな生命を買えるほど大きな富はあり得ない」。インドに伝わる寓話として、アジアただ1人のノーベル経済学受賞者、アマルティア・センは披露している。経済のあり方の原点を示す教えであろうし、人の生命の重さを最優先すべき政治の根幹をも示す言葉でもあろう。

「中小企業家しんぶん」 12月 25日号より


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