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中小企業家しんぶん

コラム「円卓」のバックナンバー

●2004年 11月 25日号

▼1年を回顧するには早いのだが、災害はもうこの辺でという気持ちのせいか、台風と地震の傷跡や海の向こうの災厄などがしきりと胸をよぎる。こんな年はたまたまと思いたい。地球温暖化のせいでなければと願うのだが

▼雪国の秋は本来忙しい。収穫はもちろんだが、暖地や都市の人には分からないさまざまな冬支度が山のようにある。新潟中越地震の日から今ごろまでが、丁度その時期だったのではないか。冬支度の有り様も風土が育てた平穏維持の地域文化であり、それを伝えるのが老人たちの役割であり楽しみでもあったろう

▼災害は多くの形あるものを奪い去っていった。被災者の方々にとっては、その形あるものを築きあげてきた努力と年月を無為にされたことの方がもっと大きい傷であろうと心が痛む。その上、平穏な日常まで奪われている。1日も早い復旧を祈る許りである

▼平穏であることの有り難さ大切さは、平穏である時には切実には感じない。だが、それが崩され、さらに積み上げた年月の所産まで無為にされた時の深刻さは途方もない。自然の猛威には抗し難いこともある。だからこそ、せめて人間が他の人間の平穏をうち砕くようなことは許されてはなるまい。

「中小企業家しんぶん」 11月 25日号より


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