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中小企業家しんぶん

コラム「円卓」のバックナンバー

●2020年 3月 5日号

▼物理学者・随筆家の寺田寅彦は、1934年に記した「天災と国防」で、「取り止めのない悪夢のような不安の陰鬱(いんうつ)」が日本国民に覆い被さり、「その不安をさらにあおり立てでもするように」天変地異が相次いでいると述べました。2年前に「満州国」ができ、きな臭い情勢の最中です。文中には、「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその激烈の度を増す」ともあります

▼近年、その「天然の暴威」が相次いでいますが、昨年の台風19号被害により影響を受けた母校から新聞部発行の新聞が届きました。全校生徒対象の台風対応アンケートでは、「避難した」との回答が12%。一方で、「指示が出たが避難せず」が36%と3倍です。また、この5年間で4回の水害を被った別の地域の市長は、避難状況のデータから、避難勧告を出しても『市民は逃げない』と強調しました

▼寺田は、災害の運動エネルギーを蓄積させ「災害を大きくするように努力しているものはたれあろう文明人そのもの」と断じています。これまで無事だったから今回も大丈夫、という「正常性バイアス」が働きがちですが、私たちにはいま、被害を想定する想像力が求められています。

「中小企業家しんぶん」 3月 5日号より


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