転換の先にある社会と暮らしを構想する

元旦の新聞各紙の社説を読んで

 昨年は「世界不況のまっただなか」の緊張感が漂う中で年明けを迎えましたが、今年は「歴史の大きな転換期のただ中にいる」(中日新聞・東京新聞)自覚の中で年が明けました。言うまでもなく、政権交代後の年明けだからです。

 元旦社説は、各紙が政権交代を象徴する民主党の旗印「コンクリートから人へ」を取り上げ、論評しています。「『コンクリートから人へ』というキャッチフレーズが独り歩きしている。危険なことだ」(読売新聞)と、バッサリ切り捨てる主張もありましたが、多くの社説は転換期を象徴する言葉として受け止めています。

 「道路やハコモノばかりにお金を投じるのではなく、直接、家計に注いで支える。成長や産業優先から命や生活を大切にする方向へ。分かりやすい路線転換が、国民の支持を呼び起こした要因だろう」(神戸新聞)と分析。しかし、単純な肯定では終わりません。「ところが、ここにきて評価は揺れている。財源難で公約が十分達成できなかった。それ以上に、転換の向こうにある社会や暮らしのデザインが、いっこうに見えてこないもどかしさが原因ではないか」(同上)と鳩山内閣の課題に鋭く切り込む論調が目を引きました。

 では、転換の先にある社会をどのように描くのか。各紙社説がかなり共通した社会像、認識を提示していることがとても印象的です。それを列記すると。

 「日本が目指すべきは、自助、共助、公助のバランスがとれ、利益も不利益も分かち合って人々が連帯できる社会ではないだろうか」(北海道新聞)。

 「失われてしまった社会連帯の精神を取り戻す」「みなが支え合う社会」(中日新聞・東京新聞)。

 「追いつめられた人を包み込み、再出発を手助けする力が、社会から失われつつある」「欧州では…『社会的包摂』という政策を打ち出した。排除ではなくて、社会とのつながりを取り戻させる方向に転換し、そのために仕事などを提供しているのだ」「地域のきずなを再生する」(京都新聞)。

 「社会の安全網のほころびが広がる中で、人々の胸に兆す誰かとつながりたい思い」「つながりづくり」(中国新聞)。

 それでは、このような社会をどうやって実現するのか。参加や参画というキーワードが掲げられています。

 「さまざまな形で『協働』する自治を築きたい。…住民が参加し、責任を持つ。これは民主主義の原点であり、国政においても変わらない」(北海道新聞)。

 「近未来を切り開くためのキーワードは『参画』」「地域のことは自分たちで決める、という気概をどうはぐくむか」(中国新聞)。

 「昨年の政権交代の真の意義は国民自身の手で政権交代を実現させたことでした。国民の1人1人が統治の主体者として責任を負ったのです。…どんな社会にするかの主体的覚悟をも問われたのです」(中日新聞・東京新聞)。

 私たち同友会は、中小企業憲章という形で、「誰もが共に暮らせる共生社会」「持続可能な社会」などの新しい社会像を提案しています。主体者としての覚悟を深め、今年を中小企業憲章制定にめどをつける年としたいものです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2010年 1月 15日号より