同友会景況調査≪2010年1~3月期≫価格値下げ競争からの脱却が課題〈経営上の力点〉

DOR判定会議

 2010年1~3月期の中同協景況調査結果をまとめた『同友会景況調査報告』(DOR)90号が発行されました。今回のDOR判定会議では、1年前のリーマンショック後の最悪期からの「回復」をどう見るかなどが議論となりました。

 日本経済は“新興国”への輸出は伸びていますが、内需はなお脆弱であり、地域経済と中小企業景気の回復は力強いとは言えない状況です。

 DORの業況判断DI(「好転」―「悪化」企業割合)は、昨年の同期(2009年1~3月)がマイナス59の最悪値だったことから、27ポイントの大幅改善となりましたが、業況の良し・悪しをたずねた業況水準DI(「良い」―「悪い」割合)はマイナス36と9ポイントの改善にとどまりました。

業種・地域・企業規模で格差

 回復過程では業種・地域・企業規模で格差が見受けられ、注視が必要です。建設業は業況判断・業況水準DIともにマイナス幅が最大、さらに業況水準 DIの次期見通しではマイナス60台への再悪化を予想するなど苦境にあります。

 地域別では、北陸・中部、関東、北海道・東北が2ケタ台の改善でマイナス30台に回復した一方、近畿と中国・四国は1ケタの改善でマイナス40台にとどまり、九州・沖縄は7ポイント悪化するなど西日本の停滞が目立ちます。

 企業規模別では、業況水準DIで100人以上がマイナス40から29ポイント改善と目覚ましい回復の一方で、20人未満がマイナス49からわずか 2ポイントの改善にとどまり、小規模企業ほど回復とは縁遠い状況です。

危惧される収益ともなわない回復

 また収益のともなわない回復となることが危惧されます。経常利益DI(「増加」―「減少」割合、前年同期比)は大幅改善したものの、当期の採算状況を問うた採算水準DI(「赤字」―「黒字」割合)では、前期の4から今期は3へとわずかに減少しており、実際には収益は低迷しています。コスト高と価格引き下げ競争の激化がその要因です。

 売上客単価DIは下げ止まったものの、仕入単価DIは14ポイント上昇したため、仕入単価DIと売上客単価DIの格差は30から40へと10ポイントも拡大しました。売上の低迷が続いており、仕入単価上昇分を販売価格に転嫁できるか、価格値下げ競争の激化を巻き起こす危険をはらんでいます。

 雇用削減傾向には歯止めがかかりましたが、人手はなお過剰状態であり、設備投資実施に意欲を見せる企業は業況水準の良い一部の企業に限られています。

 そうした中で経営上の問題点として「同業者相互の価格競争の激化」が62.8%と前期から2.1ポイント上昇して1位になり、経営上の力点も、価格値下げ競争からいかに脱却するかが最大の課題となっています。同友会型経営の真価の発揮が求められる局面です。
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 今号の「DORの眼」は「中小企業憲章制定については、中小企業庁や中小企業団体は意識を変えることが肝要」と題して、嘉悦大学の和田耕治教授が執筆しています。また、今号からA4サイズ化を実施し、文字とグラフが大きくなり、読みやすくなりました。『DOR』90号ご希望の方は、300円切手同封の上、中同協まで。

「中小企業家しんぶん」 2010年 5月 5日号より