【酒蔵19】日本酒レボリューション! 小黒酒造(株)(新潟県新潟市)

日本酒レボリューション!
固定観念くつがえした「玄米酒」
小黒酒造(株)(新潟県新潟市)

杜氏のいない酒蔵

 およそ10年前まで、日本に3000蔵あったと言われる酒蔵は、今では随分減って、1500~2000蔵になりました。

 「越乃梅里(こしのばいり)」の醸造元、小黒酒造(株)(小黒秀平社長、新潟同友会会員)は、100年間、日本酒を造り続けています。現在の主、小黒秀平氏は4代目です。かつては、ほかの酒蔵同様に杜氏がいて、酒造りの全てを取り仕切っていましたが、今の小黒酒造には杜氏がいません。

米を削らない酒づくり

 一般的に酒というのは、原料が米です。その米を削って酒を造っています。どのくらい削るのかと言いますと、30~50%、極端な場合は90%。雑味を取り、どこまでもピュアな味わいを追求するためとのことです。

 米は日本人の主食、昔から感謝して食べる習慣があります。そんなにお米を削る必要があるのか? そんな素朴な疑問を持つ人の1人に、現社長の小黒氏がいました。そうして、玄米酒造りが始まりました。

 しかし、玄米酒を造っているところはいくつかあるものの、技術的に難しく、「玄米酒はおいしくない」というのが常識でした。小黒氏が玄米酒造りに挑戦する過程で、内部外部からは反対の声、そうして杜氏がいなくなりました。

 一般的通念から言えば、酒蔵の危機です。しかし、小黒氏は、危機であるというのは固定観念ととらえ、柔軟な発想力で社員と共に玄米酒を完成させたのでした。

微生物が十分働ける環境をつくることで

 この経験の中で小黒氏は本当に大切なことを学んだと言います。1つは、「考え方、発想力」です。ダメな物は取り除いてきた今までの固定観念の減点主義ではなく、ダメな物を取り除かずに克服していくという加点主義発想。

 もう1つが、「視点」です。人間的視点にとらわれず、宇宙的視点でモノを見る、そして考える。具体的に言うと、今までの技師や杜氏は、酒造りに欠かせない微生物に対して、自分の支配下に置こうとしていました。しかし、今の小黒酒造では、微生物が十分に働ける環境を造ることが人間の役割なんだということです。真の共生、真の共育。そして、玄米100%の酒を完成させました。

日本文化の象徴としての日本酒の価値を

 酒の持つ意味は時代と共に変化し、現在、日本酒の持つ意味すらも忘れ去られようとしているのかもしれません。

 元来、日本酒は、日本の文化です。日本酒は農閑期に造られるものでした。そして、神と一緒に次の豊作を祈る場はもちろんのこと、冠婚葬祭、さまざまな場に必ず登場していました。その土地からとれた物で気分を高揚させ、神に通ずる気持ちの高みをつくるものとして、古来より酒は必需品でした。「乾杯」も杯を乾かすと書きます。

 その本来あるべき日本の文化すら失われかけています。その象徴として、日本酒の価値が見直される時がきているようです。日本酒の持つ意味を知るべき時なのではないでしょうか。

 「世界中どこを探してもこれに勝る玄米酒は存在しない」という、鮮やかな金色の酒「十全」が、2007年6月から販売されました。

 ごまかしの効かない玄米酒。全て満たされていて欠けるものがないという意味の「十全」は、同社絶対の自信作です。まずはご賞味あれ。

【会社概要】
創業
 1908年(明治41年)
資本金 1000万円
年商 2億円
社員数 15名
業種 清酒製造業(有機JAS認定工場)
所在地 新潟県新潟市北区
TEL 025-387-2025
URL http://www.bairi.net/

「中小企業家しんぶん」 2008年 1月 5日号より