食を通じて自らの手で地域を元気に~農商工連携で地域活性化、経営革新に取り組む

 世界同時不況が地域の疲弊に追い打ちをかけていますが、こんな時だからこそ、地域の中小企業が地域の資源を掘り起こし、地域を元気にしていこうと、各地の同友会でさまざまな取り組みが始まっています。

合言葉は「栗原風土(フード)で地域を元気に」~「くりはら直売館よさこい」オープン【宮城】

 7月30日、宮城県栗原市に、地元・栗原産の食品を集めた「くりはら直売館よさこい」がオープンしました。

 漢方和牛の(株)ダイチが、同社の食肉加工工場に併設して建設したもので、同社のほか、飲食店経営の(有)ゑびす、もち菓子製造の(有)もちっ小屋でん、直売所経営の(有)郷心、洋菓子製造販売の(有)パレット(全て宮城同友会栗原登米支部のメンバー)が出店。漢方和牛、栗原ずんだパン、栗原米の餅、栗原の野菜はもちろんのこと、栗原市認定ブランドコーナーも併設され、栗原の食を1カ所で堪能できるのが魅力です。

 オープン初日は、オープン前から行列ができ、3000人以上が来館。館内を回りながら、各店ごとの味わいに舌鼓を打っていました。東北自動車道築館(つきだて)インターチェンジ近くにあることから、この夏、地元だけでなく、お盆の帰省客や観光客で連日にぎわいました。

 オープン前日に開かれた内覧会には、市長をはじめ約120名の関係者が参加。(株)ダイチの佐藤勝郎社長は、「地域の農産物にこだわった農商工連携で新しい食文化を創造し、栗原に元気な風を吹かせる」と力強くあいさつしました。

 同友会の地元中小企業の仲間が「栗原フード」をテーマに集い、民設・民営という形で誕生しましたが、今後は県や市も事業に加わっていくとのことです。

 (株)ダイチと(有)パレットが、今年になって相次いで農商工連携の認定を受けるなど(別掲)、どの店も農商工連携型の食材が特徴です。地域疲弊が進む中で、「食を通じて地域を元気にしたい!」との熱い思い、自分たちの地域は自分たちの手で活性化させるという志が「くりはら直売館よさこい」をスタートさせました。全員が「経営指針を創る会」のメンバーでもあります。

 この取り組みが、地域を元気にするビジネスモデルとなり、県内各地域で次々と事業展開される日がくるのではないか。「小さな光が1つ1つ集まることで、新たな未来を創造していきます」。地域の中小企業が一丸となって、大きな一歩を踏み出しました。

栗原登米支部で2社が農商工連携に認定

「栗原特選ずんだ」をブランドに
(有)パレット http://www.palette-b.co.jp/

 (有)パレット(高橋寛社長)は、宮城の食文化である「ずんだ」(ゆでた枝豆をすりつぶしたもの)を菓子・料理用原材料とする製品の開発を行ってきました。低温・真空調理加工技術を使うことで、「ずんだ」の風味を常温で長期に保存できるめどが立ったものの、高品質で付加価値の高い商品を量産するためには、枝豆生産者との協力が不可欠。そこで、(株)愛宕産土農場(佐藤均社長)と連携し、「栗原特選ずんだ」の製造・販売に取り組み、国の「農商工連携」の認定をこの2月に受けました。

 市場経済に翻弄される農と食を憂いながら、「地域農業の育成にもなる。モデルケースになれるよう頑張りたい。農業と食で地域に貢献したい。栗原特産ずんだをブランド化し、全国に発信し定着させたい」と高橋社長。

「くりこま漢方和牛」で需要拡大
(株)ダイチ http://www.kanpogyu-daichi.co.jp/

 14種類の漢方草を自家配合した飼料を用いて肥育する「くりこま漢方和牛」。さらっとした食感で赤身の旨味が特徴、霜降りが苦手な年配者にも大人気と、注目を集めています。

 (株)ダイチ(佐藤勝郎社長)は、この漢方牛を生産する関村畜産(関村清幸代表)のパートナー販売会社として、手探りながら独自に販路開拓をしてきました。しかし、業務用市場では一定の認知はあるものの、小売・通販市場での認知度はいまひとつという状況。そこで、「くりこま漢方和牛」ブランドを確立し、販路を拡大しようと連携し、6月に農商工連携に認定されました。(株)ダイチが加工場を新設し、くりこま和牛の全量を買い取り、「くりはら直売館」など直売所や通販市場での需要拡大をめざします。

「中小企業家しんぶん」 2009年 9月 5日号より