自社の新たな価値に気づく 中同協経営労働委員会副委員長 林 哲也氏

【変革への第1歩~活用しよう企業変革支援プログラム】32

 企業変革支援プログラムでの評価と実践は2009年からです。発表されたステップ1を8名のケアマネ全員に回覧し、個別の回答用紙に一斉に記載し、エクセルに集計してグラフ化することから始まりました。

 驚いたのは「やっているはず」と思っていたことが実は「小成に安んじていた」「目を背けていた」のだと明確に示されたことです。

 ひとつは、「Ⅰ.経営者の責任 (5)企業の社会的役割と責任の自覚」がとても低いことでした。まだまだ職員のケアマネとの向かい合いが弱いことが原因だと思いました。

 もうひとつが、「Ⅳ.市場・顧客及び自社の理解と対応状況 (3)顧客の満足度の把握」の低さでした。

 早速、全員会議の場で「顧客満足に対して、われわれは目が向いていないのではないか」と率直な問題提起をしました。

 介護の世界は長らく措置制度でしたから「施しだからガマンが当たり前」の風潮の中で「なぜ、今、当社でやるのか」、更には「顧客から評価を受けるのは怖い」という思いも、形を変えて述べられました。

 こうした抵抗感がある一方で介護保険制度では「利用者満足」が正面から問われていることもあり「やむなくシブシブ」という雰囲気で実施されました。

 しかし、実施してみると驚きでした。例えば「気軽に話をすることが出来ていますか」の問いに「満足」(70%)「普通」(28%)併せて98%の回答でした。

 すると、気を良くした職員は、当時準備をしていた新しいホームページ上に、早速グラフも含めて表示し「全体的に利用者様に満足していただけているようでスタッフ一同うれしく思います」と掲載しました。

 実は「顧客満足に鈍感」だったというより「聞くのが怖かった」というのが本当だったのかもしれません。

 次に、ステップ2では「企業プロフィール」の検討が大きな財産になりました。

 経営指針を創る会でも問いかけられる「経営理念の確認」「わが社の経営資源に関する確認」などから「我が社の現状の事業ドメイン確認」へと問いが続き、その段階に至って「何業か」との問いかけがあります。

 それまでは「ケアプランをつくる会社」と表現していたのですが「看取りまでのこだわりをもった高齢者が在宅で幸せに生きることを支援する事業」と気づきが得られました。

 当社の「あなたの場所であなたらしく」の理念を表明してきた意味的価値を再確認することができたのは大変貴重な気づきでした。

「中小企業家しんぶん」 2013年 9月 15日号より