児童養護施設の生徒の就労支援を

京都同友会障害者問題副委員長・社会問題研究会代表 前川 順
(ジュンブライダル代表取締役)

 京都同友会では2年前より障害者問題委員会内に社会問題研究会を設置し「児童養護施設の子どもたちの就労に向けた適職探索支援」を行っています。

 私は京都府内で貸衣裳と写真スタジオを経営しており、9年前に外部要因によるアクシデントにより風評被害を懸念しましたが、地域のお客様に支えられピンチを乗り越えました。地域への恩返しをと考えた結果、節目を祝ってやれる大人になってほしいとの思いから753の写真を児童養護施設の子どもたちにプレゼントすることを思いついたのです。

 児童養護施設は全国に約600施設あり、さまざまな事情で親や親族と暮らせない18歳までの4万人弱の子どもたちが、将来に不安を抱えつつ施設で暮らしています(親の死去のみならず、今は育児放棄や虐待も多い)。

 子どもたちは18歳になると、行政の保護からの自立が必要ですが、「自立ありき」の焦った就職は早期離職を招きます。一般家庭なら衣食住は保証されていますが、彼らは離職イコールすべてを失うことになります。

 同友会では早期離職を防止するために中高生を対象に職業観を養う「就労体験実習」を春夏休暇に実施しています。京都府立大学の津崎哲雄教授(児童養護学)もこの運動に共感され、昨年10月「第1回社会的共同親プロジェクト」を開催するに至りました(現在は2施設が実習に参加)。

 彼らが実習で得たものは職業観だけではなく、むしろそれ以上に子どもたちにとって施設の職員以外にも自分たちを支えようとしてくれる「信頼できる」大人がいると知ったことが大きな収穫であったということです。私も実習を受け入れましたが、彼らと仕事の話や人生の話ができたことは大きな喜びでした。また、施設の卒園の集いに招かれた会員は感動の涙で巣立ちを見送ったことも加筆させていただきます。

 紙面に制約があり詳細を記すことはできません。「第1回社会的共同親プロジェクト」の報告集が発行されています。ご希望の方は京都同友会事務局(TEL:075-314-5321)までお知らせください。送付させていただきます。各地でこの運動を広げ「負の連鎖」を断ち切るサポートができればと思います。

「中小企業家しんぶん」 2014年 5月 5日号より