バイオマスタウン真庭視察 第3回 バイオマスタウン真庭を支える中小企業

【エネルギーシフトに挑戦!】第11回

 バイオマスタウン真庭では連載第2回で触れた銘建工業(株)を中心に地域の中小企業が木材業を支えています。「木を使い切る」取り組みを地域ぐるみでどのように行っていくのか、真庭市の事例を紹介します。

川上の取り組み

 月田ストックヤードはNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助をうけて、建築材に向かない林地残材(間伐材)のチップ化を行っています。運搬が楽なように工場を山側に建設しました。間伐作業16万5000ヘクタールのうち森林組合で1500ヘクタール程度間伐。チップ化され、真庭市役所などのチップボイラーなどに年間1000トン出荷しています。

 今後はバイオマス発電への供給に向けて、1日20トンを生産できるように拡張工事をしていました。

 また、真庭木材事業協同組合は2008年度に全国初のバイオマス集積基地を建設しました。バイオマス発電に備え未利用木材の搬入量は2009年度に比べ2012年度1万8400トンと約3倍にまで増えました。樹皮をむいた分や持ち込まれた樹皮分はさらに細かくして、ボイラー燃料として銘建工業(株)などに販売しています。受け入れは月間4000トンの供給体制をとり、最新の機械を補助金を使い導入し使用しています。

 林地残材は一般には燃料に不向きとされています。しかし、月田ストックヤードが乾かし、山からの搬出を協力することで解決されていました。

川下の取り組み

木質チップ

 勝山健康増進施設・水夢では銘建工業(株)のペレットを地域割引(1キログラム20円)で購入し、2基のボイラーをまわしプール内の温水や床暖房などを木質バイオマスエネルギーでまかなっています。ペレットは雨や湿気に弱いので地域でもまだ0・5%しか使用されてはいませんが、ここでは冬だと1日600キログラム、夏だと1カ月で600キログラム使用。1リットル灯油換算90円が40円と半分以下に抑えられています。

 真庭市役所本庁舎ではメインに木質チップ、サブに木質ペレットのボイラーを備え、地域の資源を自ら使用しています。吸収冷凍機によりボイラーの熱を冷暖房どちらにも使用が可能。燃料費の削減につながり、設置費は1億円と高額ですが市負担は2000万円程度、残りは補助金で賄われています。費用面を考慮して、チップの使用を優先し、必要によってペレットで補うことにより無駄のない効率的な使用が可能になっていました。

更なる事業拡大の可能性

 もうひとつの木材利用による可能性を簡単に紹介します。ランデス(株)は木材業の副産物を活用した透水性、保水性に優れた木片コンクリートを開発。水溜りができづらく公園や観光地の神庭(かんば)の滝などの舗道に使われています。体積・重さ共に軽く、女性でも扱いやすいガーデニング・園芸用品として活用されています。今後改良が進むにつれ全国でも活用が期待される国内唯一の木片コンクリート製造企業です。

 山下木材(株)は「木をそのままペレットにするのではなく、木材として利用し残ったものをペレットにして使い切る」ことをめざしています。木を全て使い切り、利益を再び山に返す、という地域活性化と自然を生かす理念を実践しようとしています。背景には「原木10本が6本分しか製品にならないのが木材業。価格はずっと下がっている」という危機感にありました。

視察を終えて

 地域をどうしていくのかかが基本にあり、地域で協力して地元の森林を生かすという取り組みには感心しました。しかし、今後は建築だけでなく木製品を付加価値の高い家具工房などに利用し、地元産の材木を利用することで地消・地産の循環ができるとも感じました。

 ヨーロッパでは自然エネルギーの75%を木質でまかなっています。日本の本来の林業はエネルギー事業でした。1942年まで薪炭材として7000万立方メートル使われていましたが、今はほぼゼロです。

 エネルギーを地域で創り地域で使うことで、地域にお金が回る仕組みになります。電気だけでなく熱の活用による電気の使用を減らし、高齢者に対応できる街づくりを進めていく構想が良くわかりました。

(松)

(終)

「中小企業家しんぶん」 2014年 7月 15日号より