【業界ウォッチ】】第1回―トラック輸送産業

 円安や消費の停滞、少子化・高齢化などが進む中、新年を迎えた日本経済。今後も経営環境のさまざまな変化が予想されます。新シリーズ「業界ウォッチ」では、各業界の動向や中小企業への影響、今後の対応策などを会員経営者がレポートします。

計画的な人材確保・育成が課題

川端運輸(株) 代表取締役 川端 章代(奈良)

川端運輸のトラック

 トラック輸送産業は国内物流の基幹的役割を果たし、市場規模は12兆円を超え、経済と暮らしのライフラインとして産業活動や国民生活に不可欠な存在です。トラック運送事業者の99%は中小企業が占めており、車関係諸税や高速料金などの過重な負担や雇用確保難など、厳しい経営環境のもとで個々の事業者の経営は一層厳しさを増しています。

進む物流の高度化・多様化

 現在の物流施策の方向性は、経済の再生と成長を支えるような「ムリ・ムダ・ムラのない全体最適な物流システム」の構築です。部品の調達から製品在庫・納品まで一貫した物流管理を行うSCM(サプライチェーン・マネジメント)や、荷主企業の物流機能を部分的あるいは包括的委託という形態で担う3PL(サードパーティ・ロジスティクス)など、物流システムの高度化・多様化は、トラック事業に対するニーズを大きく変化させています。

 荷主企業における物流の効率化の影響で、生産体制は見込み生産から補充生産へと変化し、無駄な在庫や移動は徹底的に排除される傾向にあります。物流の高度化とコスト削減を同時に求める荷主のニーズに対して、これまで供給側企業が行っていた物流を、逆に需要側が行うことでコストを低減するというような営業提案を行う動きも活発化しています。

 従来、トラック事業者は契約交渉において荷主に対して総じて弱い立場であることが多かったのですが、積極的な営業提案と合わせて、輸送の安全を確保するための理解と協力を求める「安全運行パートナーシップ」の確立も重要です。低迷している運賃と燃料油脂等のコスト増は、厳しい労働環境と低賃金水準を常態化させており、深刻な若年層労働力不足を招いています。2015年にはドライバーが約14万人不足するという予測も出されています。

 安全輸送品質の維持向上のためにも、まず中小トラック運送事業者自身が原価意識の向上を図り、原価管理の徹底による経営体質改善・荷主企業との関係確立で収益改善に取り組み、計画的な人材の確保と定着、人材育成に取り組める強い経営基盤を作ることが喫緊課題となっています。

「中小企業家しんぶん」 2015年 1月 15日号より