地域の方々に愛され必要とされる会社を目指して (株)信濃路 代表取締役 西平 都紀子氏(和歌山)

【Women!~輝く女性経営者!】

西平社長

 弊社は、和歌山県内でうどん・そばを中心とした和食店など5業態、そして海外で日本食レストランなど計17店舗を運営しております。地域の方々に愛され必要とされる会社を目指し、本年創業より41年目を迎えることができました。

「私が何とかせな!」

 私は24歳で本格的に実家の手伝いを始めることになったのですが、それまで私は父親とは合わず実家を出て、大阪でファッション関係の仕事をしておりました。ある時、当時5店舗まで店舗を拡大し経営者であった父から、店を手伝ってくれないかという連絡があり、手伝いに行くことになったその店の売上は開店時の半分以下になっていました。

 なぜ売上が下がっているのかと思い観察していると、素人目にもまずそうな商品を出していて、従業員にも全くやる気が感じられず、たぶんこの店潰れるんじゃないのと思った翌日から、「これは私がなんとかせな!」と思い割烹着と長靴で店に入りました。いまだになぜ私がそう思ったかは不明ですが、とにかくがむしゃらに仕事に打ち込み、3年後の売上はオープン当時の倍になりました。

困難の連続をチャンスとして

 それから7年後、少し喉の調子が悪くなった父は、病院で検査の結果、余命1カ月、長くて3カ月と宣告され、ちょうど今から20年前の阪神淡路大震災の日に59歳という若さで他界しました。当時私が31歳、そこで私は父の後を継ぐ決心をしました。父の気持ちを受け継ぎたいという思いと同時に、「この仕事ができて良かった」と社員の方が誇りに思える会社にするぞというところから、私の経営者としての道はスタートしました。

 経営者となりスタートした矢先に国税の調査が入り、右往左往していると今度は組合ができ、当時はなぜこんな困難ばかり重なるのだろうと思いましたが、これは神様が私を試しているんだ、もう一回り、二回り成長できるチャンスだと思って乗り越えていくことで、自身が強くなっていくのも感じていました。本当に色々ありましたが、あったことをしっかりと受け止めて、嫌なことから逃げない。逃げていると余計によくない方向へ行ってしまいますから、嫌なことは後回しにしないことは心がけてきました。

和敬喜心(わけいきしん)

 経営者としての経験を積んで行く中で、同友会や青年会議所でも大変学ばせていただきました。諸先輩方からのご指導、また多くの私と同じような2代目や3代目の経営者の方々との意見の交流は、私にとって本当に重要な経験となりました。

 社内では会議の中にディスカッション形式を取り入れ、それまでの報告が中心の会議から、参加者が意見を出し合い自分たちでひとつの答えを出すという意思決定ができる会議へと変わり、自発的に動く組織へと成長していきました。

 さまざまな経験から、数年前に「和敬喜心」という経営理念を掲げました。和を大切にし、人を敬い、人の喜びを自分の喜びと思う。そんな心を持ったスタッフが集まる会社でありたいという思いでつくりました。父から教わった、人生の価値は人のお役にたつことだということを忘れず、これからも地域に必要とされる企業を目指して信濃路は歩み続けます。

(和歌山同友会第14回経営研究集会分科会報告より)

※西平氏は、協力雇用主として刑務所出所者などの雇用や社会復帰支援に取り組んでいます。この取り組みが評価され、2014年度の内閣府「女性のチャレンジ賞」を受賞しました。同賞はビジネスや地域活動などにチャレンジすることで輝いている女性の個人や団体を表彰するもので、2004年度から実施しており、和歌山県からの選出は初めてとなります。

会社概要

創業 1975年
社員数 277名
資本金 1,000万円
本社所在地 和歌山市加納
事業内容 信州そば・うどんを主とした和食専門店
URL http://www.shinanoji.jp/

「中小企業家しんぶん」 2015年 3月 5日号より