「軽減税率制度」の撤回と「給付付き税額控除制度」の導入の提案【東京】

東京同友会理事会で決議

東京同友会

 東京同友会は10月13日の理事会で「『軽減税率制度』の撤回と『給付付き税額控除制度』の導入の提案」を決議し、発表しました。

 東京同友会では2014年10月14日に「消費税再増税に対する当会の見解」を発表し、消費課税の抜本的な見直しとともに、消費課税に伴う逆進性対策としては、軽減税率(複数税率)ではなく、「給付付き税額控除制度」の採用を提唱してきました。

 その際、軽減税率に反対する理由として(1)軽減税率は逆進性対策として非効率であり、社会保障制度の持続可能性を損なうこと。(2)対象品目の線引きが不明確で、消費者・事業者双方に大きな混乱を招くこと。(3)新たに区分経理の事務が発生し、大きく事務負担が発生すること、の3点を挙げていました。

 財務省より新たに「日本型軽減税率制度」の試案の概要が発表されたことから、試案の詳細設計は明らかではありませんが、概要から判断し東京同友会の見解として、3点にまとめました。

 (1)一連の消費税増税は「税と社会保障の一体改革」が出発点です。従って消費課税が必然的にもたらす税の逆進性を払拭する制度設計が当然に求められます。本試案は消費した分の還付であり、しかも1人当たり年間4000円という低水準の還付限度額を設け、所得の高低に区別がなく、所得の再分配に資する根本的逆進性対策とはまったく言えません。

 (2)本試案では、酒類を除く飲食料品に対する消費税の負担を軽減することになっているため、その対象品目を厳密に決める線引きの問題が発生することは、前記の軽減税率と同じであり、消費者や事業者に混乱と煩雑な事務手続きを招きます。

 (3)制度設計において消費者と納税義務者の利便性はきわめて重要であるにもかかわらず、本試案は、購入情報の把握やマイナンバーカードの提示などきわめて煩わしく使い勝手の悪いものであり、さらに、情報漏えいや成りすまし犯罪を助長することが憂慮されます。そのためのインフラ整備のコストも極めて多大であります。

 発表は「以上の理由から『軽減税率制度』の導入についても当会としては反対を表明いたします。私たちは税制全体を視野に入れた『給付付き税額控除』による逆進性対策の導入を強く求めます」と結んでいます。

「中小企業家しんぶん」 2015年 12月 15日号より