阪神淡路大震災で方針転換
阪神淡路大震災までは、お米やお酒の配達専門店でした。その後、酒類のディスカウントショップを始めたところ、お客さんもどんどん増え、大手のメーカーさんが毎日来るようになりました。
でも、そんな経営は長く続きません。酒類販売の規制緩和が始まって、大型店を優遇するようになりました。ある日税理士に呼ばれて、「このままでは危ない。店を閉めて、自宅で配達専門に戻しなさい」と言われました。そんな時に、同友会に入会しました。
玄米で死の淵から生還
当時は、朝3時に事務所から帰って、朝9時に仕事にいくような生活を続けていました。ある朝、突然腰が痛くて起きられなくなり、高熱で倒れてしまいました。化膿性脊椎炎と診断され、良くて下半身不随、最悪は死も覚悟しないといけない状況になりました。その時、医師から、体の中のばい菌を最後に倒す可能性があるのは人間の免疫力だという話を聞いて、いろいろ調べてみると、日本人は玄米を食べると体が良くなることが分かりました。それから、毎日玄米を食べ続けた結果、わずか2カ月で奇跡的に回復しました。このお米の力を伝えることが自分の使命だと、お米のセミナーをやるようになりました。
ロマンとソロバン
元気になって同友会に行くようになり、青年部の例会で報告することになりました。そこで、食卓のおいしいご飯一杯から世界中を笑顔にすると熱く報告したのです。感動で会場が沸きました。
でも、それは半分の人だけでした。ある先輩に、「経営はロマン(理念)とソロバン(数字)の両方が大事や。ロマンとソロバンの車輪が同じ大きさだから前に進む。お前は、ロマンしかない。そんな企業に未来はない」と言われました。
涙が出るほど悔しい思いをしましたが、経営者の意識が変わらないといくら勉強しても何も変わらない。とその時思いました。
飲食店とお客さんを笑顔に
ある時、ラーメン屋さんでお米の話を熱く語っていたら、うちのお米を使ってくれるようになりました。無化学調味料にこだわったお店だったので、減農薬のお米で、農家はこんな思いで作っているというポップをお店に張りました。
そうすると、2カ月ぐらいしてから、週に10キログラムだったのが30キログラムも使ってくれるようになったのです。白飯やチャーシュー丼が3倍出るようになった、と喜んでもらったのです。
それから、そのラーメン屋さんのお客さんがうちに来てくれるようになりました。スーパーで買うより高いのですが、お客さんにしたら、あのラーメン屋さんは、こんなに高い米を使って材料にこだわっていると、ラーメン屋さんに対する付加価値も上がります。 その時、飲食店さんを笑顔にすることは、その後ろにいるお客さんや何百人の家庭を丸ごと笑顔にできる。そのことは、日本中を笑顔にする近道だと気づいて飲食店に営業するようになりました。
理念を付加価値に
僕らが目指しているのは、「米はいづよねさんで買っているよ」と自慢したくなるような、そんな店づくりをしたいと言い続けています。うちの作ったポップを飲食店さんに張ってもらっていますが、激安店だったら、そんなポップは張ってくれません。僕たちの店が凛としていないと応援もしてくれないし、自慢もしてくれないわけです。お客さまを守るためにも、安売りをしてはいけないし、最高の米を提供していかないといけない。ここを磨き続けないといけません。
付加価値とは、お客さまが決めるものでそれぞれ違います。これをやったらいいというのはないわけです。あらゆることをマシンガンのように打ち続けないとだめです。付加価値戦略に一晩で何とかなるような魔法はないと思います。
第43回青年経営者全国交流会第9分科会報告より
会社概要
設立: 1889年
資本金: 1,000万円
社員数: 10名(うちパート・アルバイト6名)
事業内容: 笑顔になれるお米屋さん
URL: http://www.yonezou.com
「中小企業家しんぶん」 2016年 2月 5日号より