若手社長中心の努力集団~(株)ネツレン・ヒラカタ 代表取締役 川上 貴次氏(大阪)

【業界ウォッチ】黒瀬直宏嘉悦大学教授が迫る

 嘉悦大学教授の黒瀬直宏氏が全国の製造業を取材し紹介する「業界ウォッチ」特別版。第7回は(株)ネツレン・ヒラカタ(川上貴次代表取締役、大阪同友会会員)を紹介します。

リーマンショックからの回復

 (株)ネツレン・ヒラカタは鋼の表面を硬くする高周波焼き入れ焼き戻しの専門企業です〔従業員22人(内パート3名)大阪府枚方市〕。

 顧客を売り上げで分けると建設機械60%、自動車10%、搬送機械7~10%、農機、工具、印刷機7~10%です。機械関連業種はリーマンショックの影響を強く受けましたが、同社の売上も2008年5億6200万円に対し、2009年2億900万円(赤字)と激落しました。

 当時は雇用調整助成金を使って月、金は休業、社長は20%給料カット、やめる人も出ました。しかし、2016年には3億2300万円に回復、2010年以降は黒字を続けています。売上回復の要因は既存顧客が発注を戻しただけでなく、主要顧客の建設機械以外に新たな顧客を開拓したことです(2008年の建設機械売上比率は90%以上)。リーマンショックをきっかけに特定分野への市場依存を脱し、市場面での自立化を進めたのです。

自信を持って営業

 社長の川上貴次氏は「うちは自信を持って営業できる」と言います。理由として、小物部品だけでなく技術力が必要な大物部品を扱えること、品質、納期の管理に他社とは段違いの力があることをあげます。「いったんうちと取引を始めたらくせになる」「単価は決して安くないが、結局は顧客にとっては得になる」と断言します。この自信の基になる技術力、管理力はどうやって培われたのでしょうか。第1は人材育成、第2は改善努力です。

人材育成

 かつて、「俺は勉強が嫌いだから、この仕事をやっているんだ」という社員さんがいたそうです。

 今では「うちに入るなら勉強だ。家に帰って本を読め。これができないなら来るな」だそうです。同社では製造現場の職人たち全員が金属熱処理技能士の資格を持っています。

 管理・監督者の技能を持つ特級4人、上級技能者の1級10人、中級技能者の2級5人です。一同の勉強の成果です。勉強の中心にいたのが社長の川上氏です。

 現在40歳の同氏は27歳で入社、義父の現会長の後を受け継ぎ2015年社長に就任、以前は工場長をやり現在も営業課長を兼務しています。川上氏は最短で特級の資格を取りました。川上氏は現在の部門長たちとは同じ頃に入社、工場長になる前から一緒に飯を食いながら夢を語り、一緒に勉強、受験してきました。

 社員は仲間であり、その仲間の見本にならなくてはならないという思いだったと言います。社長自らが先頭に立つことにより、人材が育ったのです。

たゆまぬ改善努力

 (株)ネツレン・ヒラカタは技能者1人ごとに作業時間短縮の目標をたて、10年たゆみなく続けるなど、具体的な数値目標の下、生産性向上、損益分岐点低減、変動費低減、品質向上などを目指しています。

 このコツコツと改善努力を積み重ねることも他企業にはまねできない技術力・管理力につながっています。

 これは収益性を高めるだけでなく、取引先の信用も高めています。関西電力は2013年5月企業向け電力料金を平均17・26%引き上げましたが、同社は全顧客に対し3~5%の単価引き上げを要請、すべて受け入れられました。

 それは同社の電力使用量低減活動が、顧客をして「すごいな」と言わせるほど徹底しているからです。

 川上社長は年に4回社員と面談し、社員さんの改善テーマの進捗チェックを行います。勉強も仕事も若手社長中心の努力集団が形成されています。これが(株)ネツレン・ヒラカタの発展の礎です。

会社概要

(株)ネツレン・ヒラカタ
創業:1973年5月
資本金:2,000万円
従業員数:22名(内パート3名)
事業内容:金属熱処理加工(高周波焼き入れ焼き戻し)、建設機械部品・自動車部品・農業機械部品・工作機械部品・工具関係等々
URL:http://www.netuhira.co.jp

「中小企業家しんぶん」 2017年 5月 5日号より