予測通り景気低落、次期への期待あれどトランプリスクの懸念のこる

【同友会景況調査(DOR)概要(2018年1~3月期)】

〈調査要項〉

調査時点 2018年3月1~15日
調査対象 2,392社 回答企業 938社(回答率39.2%)(建設169社、製造業312社、流通・商業274社、サービス業175社)
平均従業員数 (1)38.9人(役員含む・正規従業員)(2)25.5人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

2017年の景況改善傾向から一転、低落へ

 日銀の3月短観(全国企業短期経済観測調査)では、中小企業全産業の業況判断指数(DI)は11と前回調査から横ばいですが、先行きは製造業で3ポイント低下の12、非製造業で5ポイント低下の5、中小企業全産業では4ポイント低下の7が見込まれ、2017年の景況改善傾向から一転、悪化となりました。

 DORでも業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は13→3で10ポイント悪化。足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)も18→10と悪化しました。ほかの指標も全面的に悪化しており、中小企業景気に暗雲の兆しが出ています。

 ただし、次期(2018年4~6月期)は業況判断DIで3→8、業況水準DIは10→12と今期の急落を押し返す見通しですが、トランプ米大統領の保護主義政策への懸念は残り、米中貿易戦争などの不安定要因は拭いきれません。

 業況判断DIを業種別でみると、建設業は13→△1、製造業は15→4、流通・商業は8→2、サービス業は20→6と全業種で悪化、建設業はマイナス水準に落ち込みました。また、今期は地域経済圏別、企業規模別でも全地域、全企業規模で悪化しました。(図1:業種別業況)

仕入価格の上昇圧力高まる

 売上高DI(「増加」-「悪化」割合)も13→4で9ポイント、経常利益DI(「増加」-「悪化」割合)は11→△1と12ポイントそれぞれ悪化しました。一方で、仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は32→38と上昇、売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は10→8と下降し、価格管理に注意が必要です。

 生産性でも1人当たり売上高DI(「増加」-「減少」割合)は15→3、1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)も12→1と大幅悪化し、採算面への影響が危惧されます。(図2:仕入単価、売上・客単価、1人当たり売上高DI)

人材不足、設備不足の高まり進む

 このところ緩和する気配のみられない人材不足ですが、今期も引き続き人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は△47→△48とジリジリと不足感の高いまま推移しています。

 設備投資についても2017年4~6月期から緩やかに不足感を強めているものの、設備投資実施割合は大きな動きはありません。この1年、計画予定割合よりも実施割合の方が低い状況が続いており、先行き不安から設備投資を躊躇している企業も少なくないようです。(図3:人手の過不足感、設備の過不足感)

雇用問題、仕入価格上昇が焦点

 経営上の問題点は、今期「従業員の不足」(40%)、「人件費の増加」(32%)が上位2項目となり、雇用に関していっそう危機感が高まっています。「従業員の不足」はサービス業(51%)、建設業(49%)で特に多くの企業から指摘されています。

 また、仕入単価DIの高まりと連動するように「仕入単価の上昇」の増加も目立っており(2017年7~9月期から15%→20%→25%)、製造業は今期38%と最も高く、経営課題として強く意識されています。(図4:経営上の問題点主な項目)

今こそ経営の軸足の強化を

 いつ何時、政治経済の活動領域で世界的な変化が起きるか予測がつかない不安定な状況が続いています。自業界や地域に対する影響に素早く反応し対処するため、常にアンテナを張っていくことがこれまで以上に求められます。このような時こそ、経営の核となる理念や指針にのっとりブレない経営姿勢を確立し、企業のみならず地域の将来への礎につなげていきましょう。

会員企業の実践から (「経営上の努力」記述より)

○社内で働き方を考える会議を実施。残業時間を減らし生産性を向上する取り組みをスタートしました。若年社員とのギャップにあらためて考えさせられ、役員が一番頭の切り替えを求められました(青森、建設業)
○酒類業界は昨年の酒類の流通価格の法改正で一息ついたが、今年はビールの業務用商品が値上げとなり、その反動が予想される。その際に、得意先に価格で選ばれるというより価値で選ばれる会社づくりに全力を上げる(埼玉、流通・商業)
○新工場建設にあたり、資金調達で将来(10年)ビジョンを銀行に語り、低金利での調達ができました(京都、サービス業)
○ここ1年で取引先の絞り込みによる人材の拡散を防ぎ、人員の集中を行うことにより他社に比べ信頼を得ることができ、売り上げ拡大となった(鹿児島、サービス業)
○仕入単価が急激に上昇してきているので、顧客に価格転嫁の説明に回っている(愛知、製造業)

「中小企業家しんぶん」 2018年 5月 5日号より