持続可能な自立型企業づくりで100年企業をめざす (株)サニックス 代表取締役 佐藤啓氏(山形)

【あっこんな会社あったんだ!】第5回

社員の個性を引き出し、自主性の発揮できる風土をつくる

 (株)サニックス(佐藤啓代表取締役、山形同友会会員)は自動車や大型トラックなどの整備から塗装、メンテナンスなどを行う総合自動車サービス業の会社です。1970年にニッシン自動車(株)の設立からスタート、2010年に三栄自動車工業(株)と経営統合し、2つの社名の頭文字(NI・SA)と顧客満足度(CS)を合わせて(株)サニックス(SANICS)という社名になりました。社員は約70名、山形と仙台に営業所を設けています。

会社のブランディング化

 佐藤氏はブランディングされた職場環境でやりがいや働きがいを探せる会社づくりに力を入れていると語ります。それは(株)サニックスという会社を社員が分かりやすく理解できるようにする取り組みです。その実践はさまざまなところに現れていました。例えば(株)サニックスのユニフォームには「32」のロゴマークが飾られており、ニッシン自動車(株)が行っていた第3次産業(サービス業)と三栄自動車工業(株)の第2次産業(製造業)を掛け合わし、総合自動車サービス業として、新しい価値を生み出して行く第6次産業化を表しています。色にはコーポレートカラーであるトリコロールが使われ、青、白、赤にはそれぞれ「自由、平等、博愛」の意味が込められています。ロゴにはメッセージとして「listentothecarvoice」と書かれています。これは車を顧客と捉え、車の声を聴き、車を笑顔にする、それは車でモノを運ぶ人も、運んでもらう人も、ひいては地域を笑顔にする、その笑顔を作っているスマイルファクトリーであるという意味が込められています。これらのデザインは社長や幹部ではなく、若手の社員が中心となって考えています。(株)サニックスのブランディングは、社員がどんな会社で、どんな働き方をしたいかを自らが考え、形にする取り組みなのです。

委員会活動を通して

 (株)サニックスでは2011年から経営指針作成に取り組み、2014年に成文化をしました。当初の指針は社長の思いだけで作った制度のようになっていて、社内はギスギスした雰囲気になっていました。経営指針の成文化を通して会社の風土づくりを行うことで、さまざまなことが社員主導で行われるように変化しました。社内には環境美化委員会や社内報委員会など9つの委員会が生まれ、社内報の作成や5S活動などが行われています。

 その中でも2015年4月に創刊された社内報は年4回発行され、比較的文字を少なくして写真を多く使い、職場の様子や社員の皆さんの雰囲気が伝わりやすいようラフなコンセプトで作られています。従来の自動車整備業は3K職場であまり明るいイメージを抱いてもらえない仕事ですが、この社内報を社員が家族に見せることで、会社を知ってもらうことができ、安心してもらえるようになったと言います。また分かりやすい社内報は、就職活動中の学生や教員、取引先にも好評です。

 これらの社内報の作成や委員会活動は、社員自身が会社の良さを見いだすだけでなく、業務を通してだけでは見えなかった社員それぞれの個性や良さを引き出すことにもなっており、それを社員同士で認め合う活動となっていると佐藤氏は話します。

採用と教育

 山形同友会で共同求人委員長を務める佐藤社長が山形同友会に入会したのは2010年、新卒採用を始めて今年で5年目となります。

 山形同友会では山形大学と連携して低学年を対象にインターンシップ受け入れの取り組みを行っています。(株)サニックスでも3年前からこの取り組みに参加し、昨年は男女1名ずつを受け入れました。インターンシップは受け入れの負担の大きさと、メリットの見いだしづらさからハードルが高いものと思われがちです。佐藤氏は、学生のそれも早い段階から地元の中小企業を知ってもらうことで、さきの就職活動に地元で働くことを選択肢に入れてもらえること。またインターンシップは学生側だけでなく、受け入れた企業の社員の教育にもなると話します。インターンシップに来る学生は、会社のことや社会人として働くことなど何も知らずに会社に来ます。それを学生に教えるには、教える社員が必死に勉強しなければならず、その経験を通して会社、仕事への理解を深め、後輩に何かを教える訓練にもなります。中小企業では定期的な新卒採用は難しい部分がありますが、インターンシップ生を受け入れることで、新しい視点、考え方が会社に入り、会社にも大きなメリットがあるのです。

 インターンシップは学生と企業がお互いに学びあう共育活動でもあります。(株)サニックスでは、インターンシップ生に企業説明会で使用するプロモーションビデオの製作に携わってもらいました。今の学生が就職する際に重要視しているのは、職場の人間関係です。全社員が登場するプロモーションビデオは企業説明会でも好評を得ています。経営理念を淡々と伝えても学生の心には響かない。学生に共感してもらう会社をめざすことで、今は離職率も低い現状にあり、またそれが新たな価値の創造にもつながっています。

100年企業をめざして

 (株)サニックスは2017年12月25日に経済産業省の地域未来牽引企業に選ばれました。これは地域内外の取引実態や雇用・売上高を勘案し、地域経済への影響力が大きく、成長性が見込まれるとともに、地域経済のバリューチェーンの中心的な担い手、および担い手候補である企業が選定されるものです。

 そんな(株)サニックスでは、地域の担い手企業として、100年企業を掲げています。それには社員全員が自発的に行動し、課題や問題を自分たちで解決できる自立型企業であることが求められると佐藤氏は考えています。自社への理解と誇り、働きがいをもってもらうためのブランディングプロジェクト、社員の個性や良さを引き出す委員会活動、インターンシップの取り組みが佐藤氏の考える持続可能な自立型企業づくりです。

 佐藤氏は、7月5~6日に宮城で開催される中同協第50回定時総会第5分科会で報告します。

(株)サニックス 会社概要

設立:1970年
従業員数:69名(うちパート7名)
資本金:3,050万円
事業内容:自動車の製造・修理・販売
URL:http://www.sanics.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2018年 6月 15日号より