西日本豪雨で8同友会185社が直接被害「地域のため」と再開急ぐ

 7月5日から西日本の広範囲に被害をもたらした豪雨は200人を超える死者を出し、多くの中小企業が被災しました。被害のあった地域の同友会では、会員の安否とともに企業の被災状況を確認し、7月13日現在確認されているだけで8府県185社(広島65、岡山54、福岡26、愛媛22、京都9、山口7、岐阜1、大阪1)に浸水や土砂崩れなどによる直接被害が出ています。中同協では9日に対策本部を立ち上げ、施策情報の紹介、支援金募集などを開始しました。会員企業の1割が被災した岡山の様子と代表理事メッセージ、中同協対策本部長のメッセージなどを紹介します。

 岡山県では7月6日に大雨特別警報が発令され、8日にかけて県内全域で激しい雨が降り続けました。新見市・高梁市・総社市・岡山市などで冠水や土砂崩れが発生し、多くの会員が建物浸水等の被害を受けました。

 会社に被害があったのは543社中54社。社員が罹災した企業は109社に及びます(7月14日現在)。

 とりわけ被害が甚大だったのが倉敷市真備町です。増水した高梁川支流の堤防が決壊し、大量の濁流が町を飲み込みました。

 町には5つの会員企業や店舗等があり、その大半は1階部分が水没、車両や設備も全損に近い被害を受けました。自宅や社員宅が浸水した会員も少なくありません。現時点で会員・社員の深刻な人的被害は報告されていませんが、多くの死者が出た今回の豪雨にあって、とても不幸中の幸いなどという言葉では済まされない深い爪痕を残しました。

 しかし、各社の対応は迅速でした。緊急避難のために建物を近隣住民に開放した真備町の(株)日の丸タクシー(平井啓之社長・倉敷支部)は、バス、タクシーなど54台中39台を失いながらも、毎日の通院が欠かせない透析患者のために残されたタクシーで送迎を行うなど、地域のためにも早急な本格再開をめざしています。

 一帯が冠水し、一時は陸の孤島の様相を呈した新見市井倉では、石灰製造業を営む鈴木工業(株)の鈴木香社長(吉備高原支部)が住民の避難誘導の先頭に立ちました。避難所では駆けつけた(有)楓の井上富男社長(同支部)から提供された握り飯を分け合い、住民を励ましながら水が引くのを待ちました。雨が上がった後は、浸水した家屋等の消毒に使用する消石灰の生産にフル操業で対応する一方、地域の高齢者を入浴施設に送迎するマイクロバスの運転も買って出ています。「同友会で東北や熊本の教訓を聞いていなかったら自分もどうしていたかわからない」と鈴木氏は語っています。新見市では7月2日に中小企業・小規模企業振興基本条例が施行されたばかりですが、図らずも中小企業の社会的インフラ機能を即座に裏付ける形になりました。

 梅雨が明け、連日の猛暑による過酷な状況下での復旧作業が続きますが、被災した会員企業は各地域で力強く一歩を踏み出しています。

絶対乗り切る 岡山同友会よりメッセージ

全国の同友会の皆さま

 先日来の大雨で各地に災害が発生しています。被災された方々に心より深くお見舞いを申し上げます。

 岡山の被災企業にも全国の皆様からたくさんの応援の声を頂戴していることに対し、自らも被災した会員の1人として衷心より御礼申し上げます。

 弊社の場合は、近くを流れる川が氾濫し、ご近所では屋根まで浸水する被害も出ました。弊社は1メートルほどの浸水でしたが、食品を扱っているため、製品の品質維持と安心安全に万全を期し、衛生面の危険を徹底的に回避するため、知人や学生ボランティアの皆さんのご協力もいただきながらスタッフ一同懸命に復旧作業を進めています。

 毎日のように励ましのお言葉もかけていただき、中小企業がたくさんの地域の皆さんやお客様、お取引先、仲間に支えられていることをあらためて痛感しているところです。

 今まで各地で懸命に立ち上がってこられた皆さまのご経験や教訓からも学ばせていただきながら、岡山も絶対に乗り切って参ります。温かく見守って頂ければ幸いです。

岡山県中小企業家同友会代表理事
(有)まるみ麹本店代表取締役 山辺 啓三

「中小企業家しんぶん」 2018年 7月 25日号より