同業5社で協業組合~大豆の味が生きた九州一の豆腐づくり 九一庵食品協業組合代表理事・理事長 徳田 信義氏【長崎】

 スーパーマーケットの特売では豆腐1丁が30円以下。しかし、そんな豆腐は大豆の味が薄く、豆腐本来のおいしさは伝えられません。

 九一庵食品協業組合代表理事・理事長の徳田信義氏(長崎同友会会員)は、九州一おいしい豆腐をつくろうと、西日本食品(長崎市)、山平食品(佐世保市)、諫豆食品(諫早市)、渡辺豆腐店(諫早市)、ヘルシーフード・サカエ(大村市)の県内5つの豆腐メーカーに呼びかけ、1995年に共同出資の九一庵食品協業組合を設立。同年に大村市の工場を完成させ、操業を開始しました。

 現在では1日10万丁の生産能力を有し、小学生の社会科見学など年間5000名の見学者を受け入れています。

こだわりは水、大豆、にがり

 こだわりは、水と大豆、そして、にがり。

 水は「名水百選」にも選ばれた多良山系の水で地下200メートルからくみ上げています。その水を大事に使うためにエコプラントを導入。従来10時間大豆を水に浸す作業を省き、ひき割り、脱皮、粉砕、煮炊の4工程を全自動化。浸水工程を省き、「呉(ご)*」を煮る作業まで約20分で完了します。「大豆の中身だけ」を生かし、大豆本来の風味とコクを逃さず製品化することができるようになりました。

 大豆は、看板商品に地元九州産の「フクユタカ」を、レギュラー商品には北米の農家と完全契約栽培で遺伝子組み換えなどしていない大豆を使用しています。

 にがりは長崎県五島灘の海水を使った本にがり「粗製海水塩化マグネシウム」を使います。本にがりはほかの凝固材に比べ、製造工程に手間がかかりますがそれを技術力でカバー。豆乳を過熱する際に発生する大量の泡に消泡材を使わず、圧力を加えながら煮ることで泡の発生を抑える煮釜を開発しました。

豆腐の域を越える

 徳田信義氏は1987年に長崎同友会に入会。同友会で学んで経営理念をつくり、社員からのアイデアをもとに、次々新商品を開発。

 「自社が今あるのも同友会で学んだからこそ」と、同友会は「経営大学」と思い、学んで実践する経営者の仲間の輪を広げました。

 バリエーションに富む商品アイテム数は常時60種ほど。豆腐好きにはたまらないなめらかで濃厚、大豆の自然な甘さを感じる「濃くコク豆腐」(九州沖縄地区豆腐品評会金賞受賞)。豆腐の域を越えた黒蜜やきなこをかけて食べる「もちもち豆乳」。試食1口ごとに驚きが広がります。

 プルプルねっとりした食感の「贅沢もちもちミルク」が大村商工会議所主催の「じげたまグランプリ」で「優秀賞」を受賞。長崎県産の牛乳を100%使用して造った濃厚でほんのり甘い味わいが好評です。

会社概要

創業:1995年
資本金:4000万円
従業員数: 164名(正社員80名、パート84名)
事業内容: 豆腐・惣菜製造販売

「中小企業家しんぶん」 2018年 10月 5日号より