IT・医療・アジアの組み合わせで多様な事業展開をめざす (株)ユーワークス 代表取締役 吉本 英治氏(東京)

【黒瀬直宏嘉悦大学教授が迫る海外戦略】

 嘉悦大学教授の黒瀬直宏氏が海外展開をする会員企業を取材し紹介する「海外戦略」。第7回は(株)ユーワークス(吉本英治代表取締役、東京同友会会員)に話を聞きました。

 (株)ユーワークス(2001年設立、正社員12名、パート・アルバイト8名)は大学・研究機関向けIT支援業務(売上の65%)、医療機器用ITシステム開発(同20%)、民間企業向けITシステムの設計・開発・保守(同15%)を行っています。

 社長の吉本英治氏は友人が設立した同社に2005年1月に途中入社、PR会社で磨いた営業力を買われて10月社長に就任しました。当時は大手のシステム開発会社の3次、4次下請けでしたが、女性社員が妊娠しても取引先の都合で休みを取れないなどの問題がありました。

 東日本大震災のとき、福島県出身の社員が実家の親と連絡が取れなくなり、1週間の休暇を申請、しかし、彼が担当する取引先が「納期があるので、絶対に来てほしい。休むならお金は払えない」と言ってきました。怒りでこの会社との750万円の契約を切りました。

 このままでは働き方が縛られ、社員の生活を守れない!脱下請けを決断、1~2割程度の売上のあったつくば市の大学や公的研究機関からの直接受注を増やしました。これらの顧客は、基本的に夜間・休日勤務はないので、(株)ユーワークス側も夜間・休日対応は不要。特殊な仕事が多いため既存のITパッケージの適用やその成果の他分野への転用が効かないなど、大手のシステム会社には魅力がなく、同社が入り込む余地が十分あると考えました。

 結果、2014年には下請けをゼロにでき、直接受注により売上数量も単価も上がり、利益率は大きく向上しました。残業もなくなったので、これを看板に、結婚や出産を終えた直後で人生に真剣に向き合っている25~28歳の層をターゲットに本格的に採用活動をし、優秀な人材を獲得しました。

 ベトナムを視察した2015年にまた転機が訪れます。このとき、ラボ型オフショア開発をやっている企業を訪ねました。オフショア開発とは情報システムなどの開発を海外事業者に委託することですが、受託型オフショア開発の場合、顧客は受託企業に仕事のプロセスすべてを任せるのに対し、ラボ型オフショア開発は顧客に開発スタッフを紹介、顧客が選んだスタッフを雇用し、仕事は顧客の指示のもとに行う。受託型オフショア開発にありがちな品質不安やコミュニケーションの行き違いが防げます。

 この企業の技術者との面談を通じ、東南アジアには優秀な人材が豊富なことを発見、東南アジアに負けるとの危機感を覚えました。吉本氏は当初この企業の顧客になることを考えましたが、経費を考えると自らラボ型企業を設立したほうが得策と判断し、ミャンマーのヤンゴン市にほかの日本企業5社と共同出資でラボ型オフショア開発を請けるInnovasia MJ社を設立(2017年)、(株)ユーワークスは同社の顧客にもなり、2名の専属スタッフを確保しました(他社用にもう2名スタッフがいます)。

 ミャンマーに設立したのはベトナムではすでに競争が激しいことと同社近くの情報関係の専門学校の紹介人材の中にヤンゴンの一流大学の出身者を見つけたためです。彼がInnovasia MJ社用の立地場所、4人の現地スタッフも確保し、MJ社の取締役兼技術者として日常業務の責任者となってます。こうして、(株)ユーワークスはアジアに人材基盤を構築しました。

 2015年には医療機器産業にも進出しました。本社所在の湯島には医療機器メーカーの多いことに気づき、文京区役所や地元金融機関を通じて接触、医療機器用システム開発で世界先端事業にも参加、働きがいも向上しました。

 2015年以降売上と利益率はさらに上昇、IT・医療・アジアの組み合わせで多様な事業展開が可能となり、2019年1月には経営指針書のバージョンアップも予定しています。

(株)ユーワークス 会社概要

設立:2001年
資本金:1,000万円
従業員数:12名
事業内容:法人向けITシステムのコンサルティング、開発、運用サポート。AI、IoTの応用研究等。
URL:https://youworks.jp/

「中小企業家しんぶん」 2018年 10月 5日号より