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バングラデシュ報告(上)新興大企業の勃興 嘉悦大学大学院ビジネス創造研究学科教授 黒瀬 直宏氏

【黒瀬教授が迫る海外戦略 番外編】

 昨年11月3日~10日、NPO法人「アジア中小企業協力機構」(黒瀬直宏・理事長)のメンバーでバングラデシュの人材育成機関と中小企業を訪問しました。今回より2回にわたって紹介します。

 昨年11月3日~10日、バングラデシュを訪問しました。私が理事長をしている「アジア中小企業協力機構」の事業の一環で、中小企業家同友会の会員にも参加いただきました。

 同国は1980年代半ばくらいまでは「最貧の開発途上国」、停滞するアジアの代名詞とされてきました。しかし、90年代に入ったころから経済発展が始まり、過去10年間においても実質GDP成長率は6%台前後で安定的に推移、直近の2015/16年度(7~6月)は7・11%、2016/17年度7・24%と上昇、今年度は8%に迫るとの見方もあります。国民の4割が農業に従事していますが、すでに2005/06年度にはGDPに占める製造業の割合は農林業を上回り、衣料品製造が中心ですが、工業化が急速に進んでいます。

 私たちは経済発展の担い手であるローカル企業を訪ねました。そこから見えてきたのはバングラデシュにおける新興大企業の勃興です。

 ジーンズ生産のA社(チッタゴン)は、1984年従業員400人で創業、現在従業員2万6000人の急成長企業です。創業当時、ジーンズ生産企業はなかったそうです。イタリア企業から技術と設備を導入、1994年にチッタゴンの輸出加工区(EPZ)に移転し、4工場設けました。ユニクロ(売上の25%)、リーバイス、ギャップ、ザラなど世界の代表的衣料品小売りから受注しています。政府から17回輸出貢献企業として表彰され、売上は毎年10~12%伸びています。

 新興大企業は中心産業の衣料品以外でも輩出しています。B社グループ(ダッカ)は各種プラスチック、アルミ製のボトル、チューブ、そのキャップなどを製造する9社からなっています。1987年40人で創業、現在のグループ総従業員数は3462人です。国内市場中心ですが、主たる顧客はペプシ、コカ・コーラなど外資系企業です。

 この企業を支えているのは日本式管理技術です。社長は20年前に、息子は7年前にAOTS(海外技術者研修協会、現海外産業人材育成協会)で学びました。トップから第一線従業員まで参加し、あらゆるロスを未然防止するシステムを構築するTPM(Total Productive Maintenance)の導入に成功しています。社長は従業員の積極性が競争力に最も重要とし、日本的な全員参加型の管理がバングラデシュでも不可能ではないことを示しています。

 C社(ダッカ)は従業員350人のバングラデシュ最大の物流企業です。経営者はイギリス系の物流企業に勤めていましたが、倒産。1998年会社を創設し、旅行代理店をした後、未発展だった物流部門へ進出しました。いわゆるトラック運送業者ではなく、各種物流を手掛けてます。貨物の60~70%は大型プロジェクト用の資材などの重量物で、500トンの橋梁を運んだこともあります。顧客の95%は外国企業です。バングラデシュの物流業では運搬物が途中でなくなったり、壊れたりすることがよく起こるようです。それに対し、料金は一番高いが、高度の人材を抱え、国際基準を満たしている物流を提供し、発展しました。

 以上3社の大企業への成長要因に低賃金(中国の4分の1)によるコスト競争力があるのは間違いないですが、それだけでなく、競争者の少ないうちに新産業にいち早く進出した企業家精神、外国からの生産技術、生産管理手法など専門的な技術資源に支えられていることも注目されます。高度成長期の日本でも「中堅企業」と呼ばれた新興大企業が輩出しましたが、それと同じ状況が見られたのは、私には大きな発見でした。

 ただし、バングラデシュでは低賃金だけに頼った停滞的な零細企業層の存在もうかがえます。また、大企業と中小企業の間で産業連関のない「二重状態」を脱しておらず、大企業の発展が中小企業へ波及する仕組みがないようです。

 今回の同国訪問では、汚い街路、掘立小屋のような家や粗末な店、ごみをあさり、物乞いに来る女性など、貧困問題の存続を示す光景もあふれていました。経済発展が及ばない人々が多いようなのは、このことが関連しているかもしれません。

「中小企業家しんぶん」 2019年 1月 15日号より

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