【同友会景況調査(DOR)概要(2018年10~12月)】過年は低空飛行なれど、新年は波乱含みか

〈調査要項〉

調査時点 2018年12月1~15日
調査対象 2,393社
回答企業 896社(回答率37.4%)(建設154社、製造業288社、流通・商業278社、サービス業169社)
平均従業員数 (1)41.82人(役員含む・正規従業員)(2)32.57人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。
 好転・悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考えで作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

2018年は落ち着いた展開で推移

日銀の12月短観(全国企業短期経済観測調査)は9月と比べて横ばいですが、中小企業全産業の先行きは6ポイント低下の6が見込まれています。

DORでは2018年10~12月期の業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は5→7、足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は8→12と落ち着きのある展開となりました。しかし次期(2019年1~3月期)は業況判断DIが7→6、業況水準DIは12→6と後退見込みです。(図1)

業種・地域では好転悪化が混在

業況判断DIを業種別でみると、建設業(8→3)、製造業(6→8)、流通・商業(1→5)、サービス業(11→12)と建設業のみ悪化、業況水準DIでは建設業、製造業、サービス業で改善、流通・商業が悪化と好転・悪化が混在しています。

地域経済圏別では、北海道・東北、近畿、九州・沖縄は好転、関東、中国・四国で横ばい、北陸・中部は悪化となりましたが、地域間の差は小さくなっています。(図2)

仕入単価上昇続く

売上高DI、経常利益DI(いずれも「増加」-「悪化」割合)はそれぞれ5→7、△2→0とわずかに好転しました。仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は40→45と消費増税や円安の進展による輸入物価上昇に起因する物価上昇がみられた2014年以来の高水準となりましたが、売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)も上昇し(11→15)、採算面での打撃を緩和させています(図3)。生産性を示す1人当たり売上高DI、1人当たり付加価値DI(いずれも「増加」-「減少」割合)もわずかながら上昇しています。

緩和的金融環境からの転換の暗示か?

資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は15→9と余裕感が失われました。資金調達環境も短期資金の借入金利DI(「上昇」-「低下」割合)は△11→△8とわずかに上昇圧力がかかり、これまでの借入難度容易化傾向に変化の兆しがみられます。

雇用指標は増加側を推移、人材不足は恒常化

正規従業員数DI、臨時パート・アルバイト数DI(いずれも「増加」-「減少」割合)は安定して増加側を推移しています。一方、所定外労働時間DI(「増加」-「減少」割合)は2017年1~3月期から減少側を推移しています。また、人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は依然高止まりの状態で(△47→△48)、とくに従業員100人以上の企業は△72と極めて高い不足感を示しています(図4)。

設備投資は製造業が牽引

設備投資実施割合は37%と2期同様の水準で推移し、なかでも製造業が43%と高い割合となっています。また、設備投資実施方法は「現物購入」が7割を占めていることも今期の特徴です。地域経済圏別では、2018年の豪雨災害や台風被害等の自然災害の影響もあるのか、西日本での実施割合が相対的に高い傾向にあります。企業規模と実施割合、設備不足感の高まりとの相関関係も継続してみられます。

人材不足対策に取り組む企業多数

経営上の力点は「付加価値の増大」(50%)、「新規受注(顧客)の確保」(49%)、「人材確保」、「社員教育」(いずれも45%)の順となっています。経営上の問題点は「従業員の不足」(42%)が6期連続で1位、続いて「人件費の増大」(33%)、「仕入単価の上昇」(28%)と続きます。この3項目は2018年に入ってより意識されるようになってきました。力点、問題点は密接に関係しており、企業における経営力の源泉は人材であると再認識する調査結果となっています。(図5)

国内外の経済構造の変化、目の前の経営課題と両睨みの経営

実感に乏しいながらも大きく落ち込むことなく景況感を堅持してきた2018年でしたが、2019年の年明け以降、自動車分野などで厳しい交渉が予想される日米貿易協定など、国内経済は楽観できない状況が続きます。また、英国の欧州連合(EU)離脱問題など高まる海外経済のリスクも企業心理を冷え込ませており、景気は米中貿易摩擦など世界経済に大きく左右されることも考えられることから、国内外の経済構造の変化、目の前の経営課題と両睨みの経営が求められます。

会員企業の実践から

○7月~9月は台風豪雨により、売上が激減したが、10月以降は順調である(岐阜、サービス業)
○災害対策が至急の話題となった。現在推進中(大阪、製造業)
○社屋敷地内の水路工事を行い、浸水被害にあいにくいように、設備投資済み(広島、流通・商業)
○北海道胆振東部地震のブラックアウト(停電)により、3日間生産ができなくなった分、ご迷惑をおかけした。顧問先と患者さんの信頼回復のために、あらゆる努力を試みて信頼回復に努めたことで、売上も無事V字回復することができた(北海道、製造業)

「中小企業家しんぶん」 2019年 2月 5日号より