少数精鋭で経営する中小企業は、常に人員配置に頭を悩ませます。
4月に施行される働き方改革法の年次有給休暇(以下「年休」)の5日付与義務化の対応には注意が必要です。
(1)基準日に10日以上付与が対象
年休は、基準日の前年の出勤率が8割以上の場合に付与します。
基準日は、入社後6カ月経過した日を繰越の日とする個別付与方式と、特定の日に付与する統一付与制度があります。統一付与制度は、基準日より6カ月前の入社で10日付与する場合もあり、注意が必要です。
使用者の義務として、今年4月以後の基準日で10日以上付与された社員に、以後1年間で、5日付与しなければなりません。
正社員限定ではないことも注意点です。
入社後6カ月経過の週30時間以上勤務する者、入社後3年半以上経過の週4日出勤する者、入社後5年半以上経過の週3日出勤する者も基準日で10日以上が付与されます。
(2)厚労省が示す2つの対応方法
「個別指定方式」と、従来の「計画年休制度」のいずれか、または併用が方法です。
ひとつは、新設された「個別指定方式」です。年休が10日以上付与される者の5日を使用者が時季を指定し取得させる方法です。
この制度は、労使協定を締結せずに会社が決められるのですが、一方的な命令ではなく、休みが取れていない社員と「なぜ、取れないのか」など膝を交えて話しあうことが大切です。
ふたつ目の「計画年休制度」は、労使協定で、年休の5日を超える日を指定する制度です。
労働基準法の改正前から定められています。
なお、各人が既に年休を取得している場合は、その日数分は、5日から差し引けます。
(3)時間年休は、カウントされない
昨年末に出された厚生労働省の通達では、「半日年休」は、付与義務の5日に算入できるが、「時間年休」は労働基準法の「時間単位の年休取得」のルールで適正手続きをしても、付与義務の5日に算入できないとしました。
中同協経営労働委員長として、厚生労働省に、労働者の申出による適正手続きで取得した「時間単位の年休取得」は義務日数に算入できるようにすべきと要望しました。
(4)10年ビジョンと「豊かさ」
長いゴールデンウィークもあり「休む目的と方法」を考える時代になりました。
同友会は、10年ビジョンを提起していますが、将来を考えて「休日を豊かに過ごすこと」を考える取り組みも大切です。
「中小企業家しんぶん」 2019年 3月 5日号より