【『働く環境づくりの手引き』の活用を(2)】働く環境の10年ビジョンを

 中同協は『働く環境づくりの手引き~経営指針を全社一丸で実践するために~』を発刊しました。前半は解説編、後半は実践編として連載で本書の概要などを紹介します。今回は「働く環境の10年ビジョン」「現状確認」についてです。

 第3章では「働く環境の10年ビジョン」を社員と語りあいながら作成することを呼びかけています。経営指針の実践を進める上では、経営指針のめざす方向に「自分たちの幸せの実現の道もある」と社員が心底思えるものとすることが大切です。そのためには、働く環境の改善が必要になります。

 ビジョンと言うと、どうしても「売上数字や事業領域のビジョン」が優先的になりがちです。「売上などの目標・ビジョンは持つが、働く環境については計画を持たない」という企業が少なくないようです。会社規模や売上数字などのビジョンだけでなく、働く環境のビジョンも同時に描き、関連性をもって考えることが重要です。それが働く環境の10年ビジョンです。第3章では「検討シート」も活用して「働く環境の10年ビジョン」をまとめる方法を示しています。

 第4章では、現状確認について解説しています。働く環境づくりを進めていくためには、まず自社の働く環境の現状を分析し、課題を明らかにすることが重要です。そして、その結果を基に方針と改善の方向性を検討していくことが求められます。

 第4章では「人を生かす経営の実践」の考え方で分析するための重要な視点として、(1)労働条件、(2)対話、(3)教育、(4)組織の4つを取り上げ、「働く環境分析シート」を活用して現状分析を進める方法を示しています。

 また、現状分析を行う上では働く環境についての社員アンケートや満足度調査、個人面談などにより、社員の率直な声・要望などを聞くことが大切です。社内に働く環境に関する委員会などをつくり、話しあいを行うのも方法です。

 それぞれの企業に合った方法を工夫して、社員と向きあい、意見・要望を集め、現状や課題をまとめることを提起しています。

「中小企業家しんぶん」 2019年 5月 5日号より