消費税率引き上げで約7割が景気悪化を予想 4割以上が反対・凍結を望む~消費税10%の引き上げなどについての緊急アンケート速報

 景気の後退が懸念される中、消費税10%への引き上げなどは、さらなる消費の低迷や市場の混乱を招くことが強く危惧されています。中同協では、消費税10%の引き上げなどについて緊急アンケートを実施。全国の会員から2367名の回答を得ました。

 中同協では、消費税10%の引き上げの凍結、軽減税率とインボイスの撤回の以下3点を国の政策に対する重点要望としています。

 (1)現在の消費課税は低所得者や中小・小規模事業者ほど負担が大きい税制としての実態があり、消費税10%への引き上げによって消費や景気に深刻な影響が懸念される。よって消費税10%の引き上げは凍結することを強く要望する。

 (2)「軽減税率」やポイント還元は消費税の最大の問題である「逆進性」緩和には決して寄与しない。事務負担の煩雑化によって、事業者や現場は混乱を招くのみであり、その効果は何ら期待できない。「軽減税率」導入の撤回を強く要望する。

 (3)適格請求書等保存方式(インボイス)は事業者免税点制度の実質的な廃止と同じ結果をもたらす。これは中小・小規模事業者にとっては死活問題であり、対応できない事業者が市場から排除され、企業経営や国民生活に大きな混乱をもたらす。適格請求書等保存方式導入は撤回し、現状の免税水準を実質的に維持する制度の構築を強く要望する。

 今回の消費税引き上げなど緊急アンケートでは、4月上旬から5月15日までの期間、消費税10%の引き上げ、軽減税率、インボイス制度、ポイント還元、システム改修対応などの設問で実施しました。

 まず、「消費税率引き上げで、景気はどうなると予想されますか」について、「景気が悪くなる」が46.5%、「景気がかなり悪くなる」が22.9%と実に約7割が消費税率引き上げで景気の悪化を予想。逆に「景気が良くなる」が0.9%と1%も満たず、「景気は現状維持」は21.2%となりました。

 消費税10%の引き上げについては、「賛成」が9.2%、「やむなし」が41.7%、「凍結・延期を希望する」が22.1%、「反対」が22.0%となりました。凍結・延期と反対をあわせると、44.1%となり4割以上が消費税引き上げを望んでいません。逆に賛成は9.2%と1割も満たない結果となっています。「やむなし」が41.7%と最も回答数が多くなりましたが、積極的な賛成とは言えず、あきらめ感が見受けられます。

軽減税率の反対・凍結で6割以上

 軽減税率について、「賛成」は9.2%、「やむなし」は14.2%、「凍結・延期を希望する」が8.5%、「反対」が54.0%となり、反対が過半数を超え、凍結・延期とあわせると62.5%と6割以上となっています。(図2)

インボイスは「わからない」が半数に迫る

 インボイス方式(適格請求書等保存方式)については、「賛成」が6.0%、「やむなし」が13.0%、「凍結・延期を希望する」が6.5%、「反対」が24.0%、「わからない」が48.3%となりました。インボイスについては、対応できない事業者が市場から排除され、企業経営や国民生活に大きな混乱をもたらす可能性がある中で、インボイス方式自体が知られていない実態となりました。(図3)

消費税の全く転嫁できない約1割、一部転嫁できない約2割

 消費税率引き上げ後の価格転嫁の見込みについては、「全く転嫁できない」が10.2%と約1割、「一部転嫁できない」が18.8%と約2割になり、約3割が消費税を転嫁できないと回答しました。(図4)

 「転嫁できる」は50.2%と約半数しか回答していない状況であり、一方で「わからない」が17.2%となっており、「全く転嫁できない」、「一部転嫁できない」を合わせると約半数が消費税の価格転嫁ができるかどうか懸念している状況が明らかとなりました。

ポイント還元は過半数が反対もしくは凍結・延長

 消費税増税に伴う景気対策としてのポイント還元については、「賛成」は12.1%、「やむなし」が11.9%、「凍結・延期を希望する」が6.4%、「反対」が46.8%、「わからない」が19.9%となりました。反対と凍結・延長で過半数となっています。

システム改修は2割以上が未対応か

 消費税値上げ、軽減税率などに対応した財務会計処理、コンピュータシステムやレジなどの対応・改修状況については、「すでに準備・改修を完了」が8.9%、「10月までに準備・完了」が22.1%、「現在対応中・改修中」が19.4%、「対応・改修していない・できていない」が21.1%、「めどがたたない」が2.6%、「必要がない」が19.3%となりました。対応・改修について2割以上が追いついていない実態があります。(図5)

消費税10%引き上げについての意見

「賛成」と回答した意見

 「財政健全化と福祉対策に必要」「少子高齢化に伴う財源確保に必要」「子どもや孫たちの負担を考え、出来るだけ早く財政構造の改革に着手するべき」「諸外国を見てももっと税率の高い国もあり10%の消費税は妥当」などありました。

「やむなし」と回答した意見

 「社会保障費の財源として必要」「年金や医療などの社会保障に向けての財源との認識でやむなしとしたがその運用方法を改善しない限り賛成には至らない」「個人的には反対だが労働人口減少や右肩上がりの社会保障費を考えるとやむなし」「国が決めたことだから仕方がない」など多くの意見が寄せられました。

「凍結・延長を希望する」と回答した意見

 「景気後退局面が見えている現状での消費税増税は大きな経済危機を招きかねない」「消費増税は消費を落ち込ませてさらなるデフレ化を招く」「消費税増税に関してはある程度は仕方がないとも思っておりました。しかしながら、同時にインボイス制度も始動するということを最近まで知らず、実はほかにも国民にはっきりと知らされていないことがあるのではないかと危惧」「消費税の引き上げはやむなしと思料するものの、軽減税率を導入することによって多大な混乱をまねく恐れがある」「8%への増税時点でも、給与等上昇が追いついておらず、可処分所得や預貯金は少なくなる一方で、家計の余裕が出る以前に1息もつけない。まして10%になれば、一層の負担が生活を締め付けるだろう」などありました。

「反対」と回答した意見

 「消費税の増税は景気を悪くするだけで税収増につながらないばかりか中小企業を圧迫する」「世界経済が減速に向かっている最中、日本の景気も明らかに後退し始めているのが、数字として発表されている。その中での消費増税は明らかに、日本の経済を再び長い不景気に陥れる」「需要低迷、人件費および材料費高騰の中での増税は、経営をさらに圧迫する」「輸出型大企業には還付金として消費税が還付されていることは現時点でおかしい。8%から10%になるとさらに還付額が増加することはおかしくないか。それならば法人税額での調整が望ましい」などがありました。

「中小企業家しんぶん」 2019年 5月 25日号より