GAFA、力の源泉はなにか~米中技術覇権競争のゆくえ

 米中貿易戦争に関して、「なるほど」と関心させられる研究会がありました。公益財団法人政治経済研究所の公開セミナーで「GAFAをめぐる米中覇権争い」、夏目啓二氏(愛知東邦大学教授)です。

 GAFAとは、米国のデジタル多国籍企業、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の頭文字を並べた造語。

 彼らは、プラットフォーマーとも呼ばれます。プラットフォーマーは、スマートフォンの開発と販売をはじめ、検索サイトや交流サイト(SNS)、ネット通販などインターネット上の事業を通じて世界中の顧客のデータを蓄積します。この顧客データを基に新たな製品やサービスを開発し、その魅力と価格競争力を高めて、顧客を囲い込んで成長し、巨大化します。

 GAFAらしい2つの特徴があります。ひとつは、先に見たデータ独占。もうひとつは、IPO(新規株式公開)の仕組みを利用して株式を公開し、資本調達することです。

 GAFAの高い純利益率や売上高の成長性が、彼らの株式の時価総額(企業価値)を押し上げ、投資家を惹きつけてやみません。GAFAの経営成果と企業価値は、経営者たちと株主(投資家)たちのものになります。ここにこそ、今日の世界的な規模の所得格差と資産格差の原因の1つがあるといわれています。

 アマゾン以外のGAFAの筆頭株主は、いずれも米資産運用大手バンガード・グループ。同社にブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社が世界の株式市場を席巻(990兆円)しています。GAFAへの投資は、日本のGDPに近い500兆円。税引き前利益は合計で15兆円規模と、圧倒的な収益力を示していますが、売上高に対する利益の比率は2012年の26%から20%割れ目前に下がっています。

 この下がった要因がいくつかありますが、中国のプラットフォーマー(BATH)の台頭とグローバルな競争が最大の要因です。BATHとは、バイドゥ(百度Baidu)、アリババ集団(阿里巴巴Alibaba)、テンセント(腾讯Tencent)、ファーウェイ(華為技術Huawei)。特に、米国のファーウェイに対する5Gの次世代通信技術と安全保障上の対抗措置は、「新しい経済冷戦」の始まりと言われ、いま物議を醸しています。

 はたして、ファーウェイはどうなるのか。この問題を考えるとき、米国の利害から一旦離れて見ることです。例えば、ファーウェイの低コスト構造。それを基に、基地局などの売上高シェアは、欧州・中東・アフリカで40%、アジア太平洋で30%と拡大しています。米国による排除の影響のない地域で販売を強化したため、シェアの下落は小幅にとどまったと言われています。しかも、ファーウェイは自社自身の先進技術を開発しているのです。

 そして、中国のデジタル多国籍企業の技術開発を資金的に支えたのが、欧米はじめ世界の投資ファンドでした。結局、米中の多国籍企業の競争は、世界の投資ファンドのデジタル投資をめぐる競争とも言えます。

 デジタル多国籍企業は日本にはないタイプ。日本はどうするのでしょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2019年 6月 15日号より