「食べるが勝ち」という角界の常識を覆した白鵬

人口減少という時代の変化に相応しいビジネスモデルを

 ボクシングや柔道などのほかの格闘技とは異なり、階級が分かれていない大相撲では、ウエイトが重いほうが有利に決まっています。だから、力士たちは、たとえ一時的であっても、「体重が減る」ということに大きな不安を抱いています。

 しかし、ケガのために2016年の秋場所を休場した横綱・白鵬は、抜本的な肉体改造に取り組むべく、断食に挑戦したそうです。最初は白鵬関自身もすぐに断食を受け入れたわけではなかったそうです。

 ですが、無理にでも食事を摂り続けている力士の体には、大きな負担がかかり、そのせいで病気や故障につながったりします。断食を行い、全身の細胞を若返らせ、パフォーマンスも向上するはず。こうした話が白鵬関に伝わると、ついに断食に踏み切ったのです。

 白鵬関は3日間の断食を行ったほか、「穀菜食」(穀物や野菜など植物性食品を中心とした)を徹底しました。こうした取り組みの成果が、2017年の夏場所で1年ぶりの優勝を飾るという形であらわれました。彼はその後も、場所の合間に何度も断食を行っています。手ごたえを本人自身が実感しているからでしょう。「食べるが勝ち」という角界の「常識」を合理的な判断で見事にくつがえしました。

 世の中には、一直線な勝負のみが優劣を決めると思い込んでいる人がいるようです。時代が変わっても相変わらずのビジネスモデルでやっているが、どうもうまくいかないという向きは横綱・白鵬に学んだらいかがでしょうか。

 たとえば最近、賃貸住宅建設にかかわる大手メーカー、レオパレス問題に次いで大和ハウス工業も不祥事が続発しています。

 4月に防火基準を満たしていない不適切な物件が2,000棟超あると公表していた大和ハウス工業が、再調査をしたところ、国から認定されていない基礎を使った不適切住宅が新たに約1,900棟も見つかったのです。

 今年1月には元営業所長が、取引先の太陽光発電会社から4,000万円のリベートを受け取っていたことが発覚。3月には中国・大連市の関連会社から、約234億円の会社資金が不正に引き出されたと発表しました。

 なんでこんなことになったのでしょう。人口減少という抗えない時代の変化に対して、「根性」と「頑張り」で立ち向かおうとする、時代錯誤の経営哲学が背景にあるのではないか、という論説に行き当たりました(ダイヤモンドオンライン、窪田順生「レオパレスや大和ハウスの不祥事、元凶は時代錯誤の『体育会ノリ』だ」2019年6月20日)。

 人口が激減する社会で、新しい住宅や施設をバカバカつくっていく方法は、やはりどう考えても無理があります。中長期には、その無理は頑張りや努力で乗り越えることはできません。「頑張って成長をする」という経営者の根性論から脱却する時期にさしかかっているという事実に、経営者は気づく必要があります。

 古い体質が当たり前と思われていた大相撲の世界で、白鵬関が断食で肉体改造に取り組み大成果をあげる。ビジネスモデルとして興味深い内容です。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2019年 7月 15日号より