経営者と社員の思いを出しあって (株)天・地・人 代表取締役 中筋 悠貴(神奈川)

【「働き方改革」の第一歩『働く環境づくりの手引き』の活用を(10)―事例編】

 中同協は今年4月、『働く環境づくりの手引き~経営指針を全社一丸で実践するために~』を発刊しました。作成に携わったプロジェクトのメンバーが『働く環境づくりの手引き』の意義や活用事例などを連載で紹介します。

 同友会に入会して、「人を生かす経営(「労使見解」)」を学んでいく中で、概念的なことは少しずつ理解していきましたが、具体的な進め方については、経営指針の成文化と実践の中で進めていくものだという程度の認識でした。

 今回私がプロジェクトメンバーとして『働く環境づくりの手引き』の作成に加わらせていただく中で、最も学んだことは、「労使見解」に基づいた会社づくりを具体的にどうやって進めていけばよいかということです。また、それによって「労使見解」をさらに深読みすることができました。

 わが社は、社会保険労務士事務所を基盤としてさまざまな労務相談を受けています。働き方改革の時代でもありますが、そもそも人手不足の時代にあってよい仕事環境でなければ社員を確保することはできません。

 まず、わが社での具体的な取り組みとして、仕事と家庭を両立できる体制を構築しています。その中で、日々情報共有する仕組みをつくって、毎日出勤しないパートさんが休みの日であっても他の社員が対応できるようにしています。

 また、年に4回、個別面談と称して近くの寿司屋でランチミーティングを行って、仕事や社内のことを中心にざっくばらんに話をしています。他の社員がいるところでは話しにくいような話題も出て、一人ひとりの社員が思っていることを的確にきき出す貴重な機会になっています。また、思わぬ業務改善提案につながる話が出るようなこともあって、毎回楽しみにしています。

 手引きには「10年ビジョン」があります。わが社でも、次回の経営指針の作成時までに経営者と社員の思いを出しあって、それを経営指針に反映させて実践していくところから始めます。

 この手引きが普及していけば、さまざまな取り組み事例が増えていくことでしょう。それらの事例を例会などで報告しあえれば、さらなる学びを得て自社での取り組みに厚みを増していくことができるようになります。

「中小企業家しんぶん」 2019年 9月 15日号より