消費増税、価格転嫁できず3割 軽減税率・インボイスへの対応は二分

【2019年7~9月期DORオプション調査報告より】

 10月1日より消費税率が10%に引き上げられました。2019年7~9月期の同友会景況調査報告(DOR)オプション調査では「消費税率引き上げへの対応」について尋ねています。調査対象企業の回答結果を報告します。なお中同協では消費税率10%への引き上げ後の影響を調べるため、全国の会員企業を対象とした「消費増税影響緊急アンケート」を今後実施する予定です。

[調査要領]

調査時点:2019年9月1日~15日
調査対象:2,376社
回答企業:918社(回答率38.6%、建設業168社、製造業307社、流通・商業270社、サービス業166社、その他7社)
平均従業員数:役員を含む正規従業員39.68人、臨時・パート・アルバイト25.88人

税率引き上げへの対策では「販売価格への転嫁準備」と「特になし」がともに4割

 消費税率10%への引き上げに対してどのような対策を実施したかを回答してもらったところ、「販売価格への転嫁準備」が38.0%、「特になし」が35.7%で、ともに4割程度を占めました。

 税率が8%に引き上げられる直前の2014年1~3月期のDORオプション調査でも同様の質問をしています。前回2014年4月は一律8%への引き上げであった一方、今回は軽減税率が導入されたため単純な比較はできませんが、その際の回答では「販売価格への転嫁準備」が46.3%、「特になし」が29.1%という結果でした。

「価格転嫁できない」との回答が3割以上

 増税分を販売価格に転嫁できるかどうかを尋ねたところ、「転嫁できる」と回答した企業が7割(69.1%)でした。 一方、「一部転嫁できる」と回答した企業は2割弱(18.3%)、「まったく転嫁できない」が6.0%、「転嫁できるかわからない」が6.6%という結果でした。

 本来であればすべて転嫁できなければならないはずですが、そうではない企業が3割以上(30.9%)あるのは深刻な状況です。(図1)

軽減税率・インボイス制度への対応では「対応する必要なし」が半数

 軽減税率制度とインボイス制度への対応状況についても尋ねました(図2、3)。軽減税率制度については「すでに対応済」「現在対応中」「これから対応する予定」を合わせると41.4%、「特に対応する必要なし」が50.1%と回答が二分しました。業種別に見ても流通・商業やサービス業で「必要なし」がやや少ないくらいで、全体の傾向とそれほど違いはありません。

 インボイス制度への対応も、何らかの対応をすると答えた割合と必要ないと答えた割合がおおむね半々ずつでしたが、「わからない」との回答が17.7%と比較的多くなっています。

 インボイス制度が実際に導入されるのは2023年10月とまだ先であることから理解がまだ不十分であることをうかがわせる結果となっています。

「中小企業家しんぶん」 2019年 10月 25日号より