【同友会景況調査(DOR)概要(2019年7~9月期)】トランプ不況に消費増税不況で二重の不況加速か

〈調査要項〉

調査時点 2019年9月1~15日
調査対象 2,376社 回答企業 918社(回答率38.6%)(建設168社、製造業307社、流通・商業270社、サービス業166社、その他7社)
平均従業員数 (1)39.68人(役員含む・正規従業員)(2)25.88人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。
 好転・悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考えで作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

業況判断・水準、売上高、経常利益は停滞したまま、次期見通しはさらに悪化

 今期(2019年7~9月期)DORの業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は、前期(△2)からさらに1ポイント悪化して△3となりました。足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は△3→0と若干改善しましたが依然停滞したままです。さらに売上高DI(「増加」-「減少」割合)は0→△1と一段と悪化、経常利益DI(「増加」-「減少」割合)は△5→△4と若干の改善が見られましたが、前期の大幅な落ち込みを克服するには至っていません。次期(2019年10~12月期)も業況判断DIが△3→△14、業況水準DIが0→△7、売上高DIが△1→△4、経常利益DIが△4→△6と軒並み悪化する見通しとなっています。(図1)

 政府が10月18日に発表した10月の月例経済報告でも総括判断を5カ月ぶりに下方修正、内閣府が同7日に発表した8月の景気動向指数(CI、2015年=100)の基調判断も「下げ止まり」から「悪化」に引き下げられました。消費増税前にもかかわらず目立った駆け込み需要も見られず、景気後退が進む中での税率引き上げによってさらに景気悪化が加速化される懸念が拭えません。

製造業の悪化が響く?次期見通しでは全業種でマイナス水準に

 業況判断DIを業種別でみると、建設業が2→9で7ポイント好転、製造業が△7→△16で9ポイント悪化、流通・商業が△7→1で8ポイント好転、サービス業が10→5で5ポイント悪化しました(図2)。今期、建設業と流通・商業で好転、製造業、サービス業で悪化と対照的な結果となりました。しかし、次期見通しでは、建設業が△2、製造業が△23、流通・商業が△13、サービス業が△9とすべて水面下に沈むと予測されています。2019年に入り、製造業の悪化が著しく、厳しい状況が続いています。

生産性は若干改善も依然として水面下

 生産性を示す指標である1人当たり売上高DI(「増加」-「減少」割合)と1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)は、前期、いずれも5ポイント以上の急落でマイナス側に落ち込みましたが、今期は若干の改善が見られたものの、依然としてマイナス圏にあります。しかし業種別に見ると、1人当たり売上高DIおよび1人当たり付加価値DIともに製造業の落ち込みが目立ちます。

建築業でさらに深まる人材不足感

 正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)などの雇用面は前期に引き続きプラス側を維持し、人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は△43→△40と全体では若干の緩和がみられました。しかし建設業は△61→△69と人材不足感が一段と深まり、強い不足感が継続していることがうかがえます。(図3)

 なお、所定外労働時間DI(「増加」-「減少」割合)は△15→△16で2017年1~3月期以降11期連続でマイナス側を推移しています。

設備投資は実施割合が計画割合を上回るも厳しい状況が続く

 設備投資実施割合は35%→38%と安定した水準を維持し、さらに今期は前期の計画割合36%を2 ポイント上回るなど、近年継続していた前期の次期計画割合を実施割合が下回る状況が逆転しました。(図4)

 設備投資の実施方法では「現物購入」が62%→69%と7ポイント増加していることから、消費増税前の駆け込み需要が一定程度あったことが推測されます。

 一方で実施目的では「維持補修」が43%→41%と依然高い水準にあることや、「設備投資計画なし」の理由として「当面は修理で切り抜ける」が40%→42%、「採算の見込みがない」が12%→14%と増加、「自業界の先行き不透明」が18%→18%と横ばいという状況にあるなど、積極的な設備投資を見合わせる企業も少なくなく、経営環境は厳しい状況にあります。

景気後退と消費増税に対して長期的視点からの対策を!

 経営上の問題点では、「従業員の不足」が38%→37%と若干割合が減少したものの、依然として高い割合が続いています(図5)。特に建設業は50%→54%と他業種で割合が低下しているにもかかわらず増加している状況です。また指摘割合1位の項目が業種によって異なり、建設業とサービス業は雇用面、製造業は需要の停滞、流通・商業は価格競争の激化を問題点と捉えている割合が高いことが今期の特徴です。景気悪化の中での消費増税など、厳しい経営環境が続きますが、人材確保をはじめ、長期的な視点に立った経営が求められます。

〈長期的視点に立った経営改善の取り組みを! 会員企業の取り組みから〉

○働く環境づくりの手引きを活用して、リーダー2名と1日話しあいました。10年後の会社の体制と姿を見つめて、9月からの新しい年度に向け、計画を立てました。PDCAを少しずつ確実にやっていく事を確認しました。(富山、建設業)
○ここ10年で入社した従業員さんの働く意識が大きく変化した。その流れに沿って「的を射た働き方改革」ができるかどうかである。人手不足など目先の会社運営でいかにもうけるかというより、いかに継続した未来に向かって生き続けるか淘汰の岐路に立たされているようである。(和歌山、製造業)
○7月にレクリエーション系の職場討論を実施した。8月に社員のみで経営方針の検討会議を実施した。9月中旬納期で各部門ごとの経営計画を提出してもらう予定。今後も検証と改善を継続し、経営指針の全社的実践に努めます。(島根、流通・商業)

「中小企業家しんぶん」 2019年 11月 5日号より