【連載】SDGsをどう生かすか~人間尊重の同友会理念によせて~ 最終回 SDGsをどう生かすか

一般財団法人アジア・太平洋人権 情報センター(ヒューライツ大阪)特任研究員 松岡 秀紀

 本年の全研第2分科会や定時総会第2分科会のテーマになった「SDGs」。

 一人ひとりの人権を実現する同友会の企業づくりと多くの共通点があります。その概要について連載します。今回が最終回です。

 これまで3回にわたって、(1)SDGs(持続可能な開発目標)は2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に含まれる、貧困、飢餓、保健、教育、ジェンダー、労働、水、生産と消費、エネルギー、気候変動などに関する17の目標であること、(2)企業には「創造性とイノベーション」を発揮してこれらの目標の達成に貢献することが求められていること、(3)SDGsの重要な基本理念には「誰ひとり取り残さない」があり、SDGs全体が人権尊重をベースとしていることを紹介してきました。最終回の今回は、同友会理念に関連づけながら、SDGsを企業経営にどう生かすかを考えます。

 同友会理念では、「自主・民主・連帯の精神」に基づきながら、「よい会社」「よい経営者」「よい経営環境」という3つの目的の実現をめざすとしています。そして、それを支えているのは、社員を人として大切にする「人間尊重の経営」です。これらの目的は、平和で持続可能な社会と地球環境があってこそ実現できることを考えると、めざすべき同友会理念の目的は、SDGsの17目標とつながっていきます。また、「人間尊重の経営」もSDGsのベースにある人権尊重と重なっています。

 こう考えると、同友会の企業のみなさんは、すでにSDGsに取り組んでいることに気がつきます。企業向けのSDGsセミナーなどに参加すると、SDGsのために新規に何かを始めなければならないと思いがちです。しかし、日々すでに取り組んでいることも多く、また、今は不十分でも、取り組みをさらに伸ばしていくことで、十分に貢献できると言えます。ただその際、部分的な取り組みではなく、経営全体の質を変えていく視点も重要です。その変えていく方向は、同友会理念と重なっています。

 少子高齢化が進む中での厳しい経営環境のもと、しかし、だからこそ、目の前の経営課題とSDGsの目標を結びつけながら前へ進んでいくことが、企業価値を高め、持続可能な経営につながっていくと言えるでしょう。

「中小企業家しんぶん」 2019年 11月 5日号より