【介護離職防止】連載第1回 社会全体で支えて介護離職ゼロへ

 今号より近年、社会問題になりつつある「介護離職」について月1回、3回に渡り連載します。

 家族の介護が必要となって離職を余儀なくされる「介護離職」が大きな社会問題となりつつあります。政府が掲げる「ニッポン1億総活躍プラン」の中で、介護離職の防止は大きな柱の1つとされています。

 総務省の就業構造基本調査(平成29年)によると、全国の有業者は約6621万人、そのうち介護をしながら働く人は約346万人とされており、高齢化が進展する中、さらに増えていくことが予想されます。

3つの課題

 実際に介護離職された方の47・8%が「離職直前に誰にも相談していなかった」と回答している調査もあり、多くのケースで課題となるのが次の3つです。1つ目は「どこに相談すればよいのか」「福祉サービスを使えるのか」という情報不足や情報へのアクセスの問題。2つ目は「福祉のお世話になるのは恥ずかしい」「家族が介護すべき」という伝統的、日本的な家族観、介護観などによるもの、そして3つ目が「職場に介護しながら働くことを許容される環境がなかった」「とても言い出せなかった」など、職場、上司などの理解や環境の問題です。

社会全体で支えあう

 離職によって介護者はそのキャリアや社会とのつながりが断たれ、収入や将来の年金等も減少します。また企業にとっては貴重な人材やスキル、蓄積を喪失することとなり、場合によっては大きな損失や経営上のリスクにつながりかねません。介護は決して「個人の問題」や「その人の家庭問題」ではなく、「社会全体で考え、支えあうべき課題」といえます。

 独立行政法人福祉医療機構では、福祉保健医療総合情報提供サイト「WAMNET(https://www.wam.go.jp/)」を運用しています。特設サイト「~介護で、仕事をやめない・やめさせない~ 介護離職ゼロの実現に向けて」を設け、家族の介護に直面しながら働く方への情報、企業や上司が必要な情報などを分かりやすく提供しています。

独立行政法人福祉医療機構情報事業部長 坪井 七夫

「中小企業家しんぶん」 2019年 12月 15日号より