連載【「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて】第5回 「社会に開かれた教育課程」の事例紹介(1)

 2020年度から、新しい学習指導要領に基づく学校教育が始まります。新しい学習指導要領がめざすのは「社会に開かれた教育課程」の実現です。前回まで解説した新しい学習指導要領の理念である「社会に開かれた教育課程」の実現には、さまざまな方面からの取り組みが必要です。今回から、学校関係者と地域の企業などが連携して取り組んでいる自治体の事例を紹介します。

これまで4回にわたり「社会に開かれた教育課程」の理念やその実現に向けた文部科学省の施策等についてお伝えしてまいりました。今回・次回の2回にわたり、「社会に開かれた教育課程」の実現に学校関係者と地域の企業等が連携して取り組んでいる自治体の事例を紹介します。今回は岩手県大槌町の事例をご紹介します。

2011年の東日本大震災で津波による大きな被害を受けた大槌町では、震災から立ち上がるため、学校教育においてふるさとの将来を担う人材の育成をめざすことにしました。教職員と地域住民がこれからの大槌町の学校の教育について熟議し、子どもたちが「郷土への誇り」をもてるようにすること、子どもたちに「社会の変化に柔軟に対応する力」や「将来への夢や希望を描き実現へ向けて努力する力」を身に付けさせる学校教育を進めることとしました。

そして、大槌町教育委員会が中心となって、小中9年間を通じて行う「ふるさと科」という独自教科のカリキュラムを策定しました。「ふるさと科」では、「地域への愛着を育む学び」「生き方・進路指導を充実させる力を育む学び」「防災教育を中心とした学び」を町民の方々や地元企業などの協力を得て行います。例えば、「地域への愛着を育む学び」と「生き方・進路指導を充実させる力を育む学び」では、大槌町の経営者、漁師等が講師となって授業を行います。また、キャリア教育の一環で、町内の約70の企業の協力により職場体験学習も行っています。

大槌町が学校と地元企業などの連携・協働を進めるに当たって活用したのが、コミュニティ・スクールです。コミュニティ・スクールとは、学校運営協議会を設置した学校のことで、保護者や地域住民等が学校の運営に参画するものです。読者の皆様も、近隣のコミュニティ・スクールに積極的にかかわっていただければ幸いです。コミュニティ・スクールは、読者の皆様と学校をつなぎ、「社会に開かれた教育課程」の実現に大いに資すると考えています。

次回は山口県周防大島町の事例を紹介します。

文部科学省初等中等教育局 教育課程課

「中小企業家しんぶん」 2020年 1月 15日号より