新型コロナウイルスの経済的影響~経済のグローバル化が危機のグローバル化を引き起こす

 今、この問題を避ける訳にいくまい。新型コロナウイルスのことです。

 各同友会の調査によると、経営への影響は「すでに出ている」や「今後出る可能性がある」との回答が、調査の行われた週が現時点に近づくほど高くなります。だいたい9割ぐらいが「出ている」などと回答しています。日ごとに自らの経営にさまざまな影響が及んでいる様子がわかります。

 声を拾うと、「ホテル経営ですので、宿泊・宴会とも影響。宿泊は海外旅行者のキャンセル。宴会は自粛ムードが高まっている」や、「九州の工場が、中国からの部品供給困難により停止。よって、当社部品も納入停止となっております」というサプライチェーン断絶、「運送業のため荷主企業さまのライン停止が見られ始めましたので、いつ休業になるかという状況です」(静岡同友会の調査より)という声から、景気後退ムードが徐々に売り上げに響いてきたという声などです。

 しかし、展示会やイベントの中止、果ては外出の手控えなど消費自粛につながる風潮が出てくると、手の打ちようがありません。

 しかも、景気はDOR(同友会景況調査)が警戒しているように、業況判断がマイナスを更新しています(昨年4~6月期より)。国の統計では、GDP(国内総生産)改定値は昨年10~12月期の実質成長率が年率換算で7%を上回る大幅なマイナスとなりました。原因は言うまでもなく、消費税増税。その弱っている状態の日本経済の弱さを突いたのが新型コロナです。景気後退と見ざるを得ません。問題はどの程度の景気後退となるか。事態の収束するのを待つしかないかもしれません。

 そもそも、新型コロナは不思議なことだらけです。最初の感染者が確認されてから3カ月以上たったにもかかわらず、感染源も感染経路もまだ完全に突き止めていないようです。武漢という中国の内陸部の地方都市で起きた感染症がなぜ中国、そして国際社会でパニックを引き起こす大きな問題に発展したのか、など。

 一説には、新型コロナが世界でもトップクラスのバイオセーフティレベル4のラボを持っているといわれる中国科学院武漢病毒研究所から漏れたとの指摘もあります。とはいえ、この説は実証されるまでは、ただの一説にすぎません。

 いずれにせよ、経済のグローバル化が危機のグローバル化を意味する時代になったということです。冷戦崩壊後、経済のグローバル化が大きく進展しました。この結果、経済的政治的にも国際社会に大きな影響力を持つ中国のような国で起きた危機が、そのままグローバルな危機に転化する構図が形成されてきたわけです(呉軍華「『新型肺炎』はなぜまん延したのか」金融財政ビジネス)。

 世界はこれまでなかったような危機の発生リスクを内包してしまいました。今後、さまざまな危機が襲来する可能性がありますが、私たちは危機に立ち向かっていく覚悟が求められているでしょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2020年 3月 15日号より