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【連載】役に立つ新民法~知らないと身を守れない改正のポイント 第2回

弁護士法人千代田オーク法律事務所 代表弁護士 児玉 隆晴 (東京)

 2020年4月に民法が改正されました。120年ぶりの大幅な改正となり、契約などに関する基本ルールについて約200の改正があります。企業経営に与える影響も大きく、知らなかったでは済まされません。2回目の今回は保証契約締結時の情報提供義務について説明します。

保証契約締結時の情報提供義務

 新民法は、事業のために負担する債務について個人保証を依頼する場合は、債務者が自らの返済能力に関する一定の情報を提供すべきであるとしました(465条の10)。たとえば、事業資金の融資について個人保証をしてもらう場合は、借主は、保証人に対し、(1)借主の財産および収入・支出の状況、(2)ほかから借入をしているときは借入額や返済状況、(3)ほかに担保を提供するときは担保の内容などの情報を提供する義務があります。この情報提供により、保証人に保証のリスクを判断してもらうことにより、保証人保護を図ったものです。

 これらの情報が適切に提供されず、そのために保証人が誤認して保証し、かつ、債権者がそのことを「知り、または知ることができた」場合は、保証人は保証契約を取り消すことができます。

 この点、債権者である銀行は、融資の際に、借主に直近3期分の決算書を出させるなどして、借主の返済能力を把握しているのが通常です。そうすると、「融資額から見て借主の単独での返済が困難であるのに、保証人が現れた場合」は、上記の情報がその保証人に対して適切に提供されていないことを「知ることができた」と認定される可能性があります。したがって、銀行としては、今後は借主の保証人に対する情報提供の場に立ち会って、情報提供が適切にされているか否かを確認する必要が生じると思います。

 そのような情報提供がされていないのに保証契約をした場合、保証人は、保証契約を取り消すことができます。これは保証人にとって重要です。

 また、銀行が保証人から、「適法に情報提供を受けました。万一、これが事実と異なっても異議を述べません」などの文書を取り付けた場合も、それだけでは保証人の取消権は失われません。何ら情報提供がない場合に、このような文書の効力を認めると、取消権の事前放棄を認めることとなり、新法の趣旨に反するからです。もっとも、この文書は、情報提供があったことを証明する資料の1つとなりますので、保証人は安易にこのような文書にサインしてはいけません。

 なお、この情報提供義務は、借入金債務だけではなく、広く「事業のために負担する債務」の個人保証に適用されます。たとえば、「事業のための賃貸借」について個人保証をしてもらう場合も、賃借人が保証人に対して上記の情報を提供しなければなりません。ただし、賃借人が法人であり、保証人がその代表者である場合は、情報提供は不要です。代表者は、これらの情報を十分に知っているからです。

「中小企業家しんぶん」 2020年 6月 15日号より

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