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中小企業支援策活用の現状~各種支援策活用2~3割、活用していないも3割弱

新型コロナウイルス感染拡大の勢いが未だ収まらない状況が続き、中小企業経営にとっても大きな影響が出始めています。そこで、2020年4~6月期の同友会景況調査報告(DOR)オプション設問として「新型コロナウイルス関連支援策活用」について調査をしました。その回答結果を中同協企業環境研究センター委員の梅村仁・大阪経済大学中小企業・経営研究所所長に分析・執筆してもらいました。

同友会景況調査(DOR)2020年4~6月期オプション調査より

大阪経済大学中小企業・経営研究所 所長 梅村 仁

中小企業家同友会全国協議会(中同協)は、中小企業における新型コロナウイルスの感染拡大の影響を調査するため、いち早く2020年3月にアンケート調査を実施し、33道府県3664社より回答を頂き、以下のようにまとめている。

第1に、マイナスの影響が「出ている」「懸念される」企業数は合わせて88%に上った。第2に具体的な影響として「商談遅延」を示す企業が37%となった。第3に、2020年3月の前年同月対比で売上減少となった企業数は53%となった。最後に、国や自治体の中小企業への支援策では、「政府系金融機関の融資制度」(69%)、「セーフティネット保証」(59%)が比較的知られているものの、「雇用調整助成金」(48%)、「返済猶予等の既往債務の条件変更」(24%)は知られておらず、諸制度があっても情報が行き届いていない状況が示された。

実際に、DORに寄せられた会員企業の声として「支援を受けるための具体例がなく分かりにくい。また、手続きが複雑で実施されるまでの期間が長く、タイムリーでない(東京、サービス業)」など不満の声もある。言うまでもないが、中小企業支援策は、活用されてこそ、政策の役割を達成することから、その実効力の向上が重要である。

こうしたことから、会員企業は実際にどのように活用しているのかについて、2020年4月~6月期同友会景況調査(DOR)のオプションとして調査したことから、その結果を報告する。

中小企業支援策が十分に活用されていない

オプション調査の1問目の、「新型コロナウイルスに関連した支援策で活用したものはありますか」に対して、有効回答数十68社のうち、「政府系金融機関の融資制度」30・4% が最も多く、「雇用調整助成金」27・2%、「セーフティネット保証(保証協会)」23・7%、「持続化給付金(売上50%以上減少企業への給付金)」22・8%、「民間金融機関の実質無利子・無担保」16・9%の順となっている。一方、「活用していない」とする回答が27・9%もあり、回答件数は2番目に多い結果となっているのは気がかりである。(図1)

各種支援策に対する中小企業家の声

では、会員企業は実際のところどのように考えているのか、今回の調査において寄せられた会員企業の声を紹介する。「政策金融公庫の対応に時間がかかりすぎる。申し込みが多く大変なのは理解するが、先の見通しすらたたない状態の連絡をもらっても意味がない。何らかの対処を構じてほしい。また今回は影響が数年にわたり長期化すると予想されるので、この支援策も長期にわたって行ってほしい(千葉、製造業)」といった批判の声が多くある一方、「同友会の広報などからもさまざまな支援策の案内があり、該当適用出来るものについては申請準備をしているが、新型コロナウイルスによる影響が来年、再来年と長引いた場合に、どのような対策ができるのか心配である(大阪、流通・商業)」「日本政策金融公庫に申請して1カ月で入金、持続化給付金は2週間で入金された。セーフティネットも銀行が代行し素早い対応だった。政府の対応の早さに感謝している(愛知、製造業)」のように行政ならびに金融機関がリーマンショック時の経験を活かして、スピーディーに実行する姿勢は一定程度整っているといえよう。

支援策を活用しない企業はどう捉えているか

次に、前出の質問において、「活用していない」と回答した企業へのその理由を問うた結果は、「支援を受ける必要がない」47・1%、「自社が必要とする支援がない(自社が求める支援がない)」19・2%、「申請したいが申請条件に合わず断念」16・8%、「従来の支援策の利用で足りている」7・5%、「申請準備のための時間等の確保が困難」4・5%となった(図2)。

会員企業の声として、「人それぞれに自分の立場で考えれば、どのような支援策も支持できるものとできないものがあるし、万人がよしとする策はない。自社で利用させてもらえるものは、ありがたく利用させてもらうが、それ以上は結局のところは自主努力であろうと思う(大分、サービス業)」など、新型コロナによって激変する環境を冷静に見る会員企業の多いこともうかがえる。

また、「支援策が場当り的で後追いの感じがする。こんなに多くの支援策を用意する必要は無い。あそこにも、ここにもと要望に応えて支出するとなれば、とりとめの無い財政支出となり、今後の国の財政内容が極端に悪くなる。景気が良くなれば、この財政悪化を取り戻せると考えているようだが、結局は国民負担の増税に頼ることになる(静岡、流通業)」など、中小企業支援の拡大を望む一方、政策展開に疑問を持つ会員企業は多く、今後の日本を憂う気持ちは筆者も同じ気持ちである。

期待される政策は

では、期待される政策とは何なのだろうか。会員企業からは、「融資制度を活用しても返済しないといけない借入金なので、活用しようと思わないが、資本に注入できるような永久劣後ローンなら利用しようと思う(大分、サービス業)」、「私はまだ経営者としては若く事業継続のために借入を実施したが、60歳や70歳でこれから5年も10年も返済があると考えた場合、借入を躊躇するかもしれない。永久劣後ローンはとてもよいアイディアと思われる(愛知、製造業)」などの声のように、次なる政策として「永久劣後ローン」の導入に期待を寄せている声が多い結果となった。また、さらに踏み込んだ声もあったので紹介する。「融資もしくは補助金の形で行われているのが大半だが、もっと直接的なスピーディーなものが望ましい。例えば減税(消費税含む)あるいは社会保険料の減免など(愛知、サービス業)」

劣後ローンは債権回収の順位が一般債権より後になる(劣後する)企業向けの金融商品。金融機関から自己資本として扱われるが、金利が高い。永久劣後ローンは劣後ローンと同様の特徴があるが、返済期間の定めがない点が大きく異なる。また、劣後ローンは中小企業の支援策として期待されている一方、金融機関からの厳しい審査が前提となるが、モラルハザード(倫理の欠如:制度を悪用する企業がでる懸念)やゾンビ企業の延命(業績の悪い企業が生き残り、市場の新陳代謝が阻害される)などの課題も一部では指摘されている。

中小企業支援策の活用を

政府の緊急事態宣言後、感染拡大防止に伴う経済活動への制約が徐々に薄らぎ、感染防止と経済再生が両輪として動き出したかのように見えた。しかし、2020年7月以降のさらなる感染拡大により、多くの国民、企業が不安の中にある。筆者による東京都港区産業振興課へのインタビューにおいてセーフティネットの現況を聞いた。「リーマンショック時のセーフティネット貸付は、概ね3年間続き、約6500件、約600億円を実効したが、2020年3月から7月末までですでにそれ以上の相談をいただいている。とにかく、緊急的な様相が深い」とあり、中小企業の厳しい現状が見て取れる。

また、期待されたGo Toキャンペーン事業も地域経済における重要な観光イベントが相次いで中止に追い込まれ、また国民の自粛の声も強く期待への喪失感も大きい。業績不振が一段と深刻化すれば、飲食業、観光業などの存続が厳しくなり、地域全体への影響拡大も懸念される。

一方、「コロナの影響はかなりあり、これからもっと影響がでてくると思う。リーマンショック時の対応を振り返りピンチをチャンスにするように考えている(静岡、流通・商業)」などの会員企業の声もあるように、新しい生活様式の推奨とともにビジネスの在り方も変容を迫られる中、業績回復や事業継続に向けた先行きの展望を描くためにも、有効と判断された場合はぜひ積極的に中小企業支援策の活用をいただければと思う次第である。

「中小企業家しんぶん」 2020年 9月 5日号より

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