【報告】新型コロナ第3次会員企業影響調査中小企業へのマイナス影響依然9割

アフターコロナではデジタル化・テレワーク・地方分散を予測

中同協は、新型コロナウイルスの第3次会員企業影響調査を実施(7月10~27日)し、25同友会3437社分の集計をまとめました(9月5日号で速報)。調査からは新型コロナウイルスのマイナス影響が依然として続いていること、アフターコロナでは「デジタル化」「テレワーク」「地方分散」が進むと見ていることが浮き彫りになりました。

マイナスの影響は依然として9割

新型コロナウイルス感染症拡大による経営へのマイナスの影響が「出ている」と回答した企業割合が5月の前回調査から2ポイント増の58・9%となりました。「今後マイナスの影響が懸念される」企業と合わせると前回同様9割におよびます。6月の前年同月対比の売上は56・4%の企業が「減少」と回答、3月、5月の調査と同じ水準が続いています。5月末に緊急事態宣言は解除されましたが、多くの中小企業にとって依然として厳しい状況が続いています。(図1、図2)

「新しい生活様式」によるマイナス影響も

具体的なマイナスの影響としては「商談遅延」(29・3%)、「予約キャンセルによる売上減や損失」(23・9%)、「来店客の減少等による売上減少」(21・6%)が上位を占めています。緊急事態宣言が解除されたこともあり、3月や5月の調査よりはそれぞれ割合としては減少傾向にあります。一方、政府から「新しい生活様式」が求められるようになり、それによって「マイナスの影響」「プラス・マイナス両方の影響」を受けている企業がそれぞれ32~33%あります。合わせるとマイナスの影響を受けている企業は65%にのぼります。(図3)

「持続化給付金」は3社に1社が利用

国の支援策としては、「持続化給付金」は3社に1社、「政府系金融機関の融資」「雇用調整助成金」は4社に1社で利用されています。「民間金融機関の実質無利子・無担保融資」も約2割の企業が利用しています。利用した結果、「大変役に立った」「ある程度役立った」を合わせると5割を占めています。一方、「もっと拡充してほしい」「手続きが煩雑」なども少なくありません。新型コロナの影響の長期化を見据え、支援策の一層の充実、利用しやすい環境づくりなどが求められています。(図4)

「デジタル化」「テレワーク」「地方分散」を予測

新型コロナ収束後のアフターコロナの経済・社会では、どのようなことが進むと思われるかについては、「デジタル化・IT化の推進」(54・6%)、「テレワーク・リモートワークの増加」(49・9%)が5割前後の回答となりました。一方で「リアルでの対面接触の価値向上」(21・1%)を挙げた人も多く、デジタル化が進むとともに、リアルの価値も向上するとの見方が少なくないと言えます。感染者が大都市で多く発生していることなどを背景に「地方分散型社会への転換」が進むとの回答(28・1%)も多く見られます。

一方、「経済格差・差別の拡大」が進むと見る人も27・3%と少なくありません。また「人間尊重の社会づくり」が進むとの回答は7・7%と少数です。(図5)

「根本的な日本の抱える問題点への長期的視点での議論を開始しなくてはいけない(愛知、流通・商業)」、「未来へ向けどんな国づくりをするのか、はっきり示してほしい(山形、広告代理・出版)」との指摘も見られ、デジタル化や地方分散型社会の進展が経済格差の解消や人間尊重の社会につながるように、国として明確な理念とビジョンを示して政策を実行していくことが求められていると言えます。

付加価値向上、新規受注に注力

現在の経営上の力点としては「付加価値の増大」(30・7%)、「新規受注(顧客)の確保」(28・2%)が上位に挙げられました。その実現のために「人材確保」(15・7%)と「社員教育」(18・1%)に取り組み、「新規事業の展開」(15・2%)をしていこうという姿勢が見られます。一方、「人件費節減」は2・7%とごく少数にとどまっています。厳しい経営環境の中で支援施策を活用しながら付加価値の増大や新規事業などにも積極的に取り組み、従業員の雇用と生活を守ろうと努力している姿を見てとることができます。(図6)

「中小企業家しんぶん」 2020年 9月 25日号より