【知っておきたい新型コロナ対策】vol.2 職場で感染者が出た場合の対応

OHサポート(株) 代表/産業医 今井 鉄平(神奈川)

 経営者にぜひ知っておいて頂きたい新型コロナ対策情報連載(全10回)の2回目になります。今回のテーマは「職場での自費PCR検査実施の考え方」についてです。

 無症状者への自費PCR検査を請け負う医療機関が増えてきていることもあり、職場で新型コロナウイルス感染者が発生した場合、たとえ濃厚接触者に該当していなくても従業員全員にPCR検査を受けさせたいと考える経営者も少なくないものと思われます。また、発熱や風邪症状のある従業員に対して、陰性証明を求める企業もあることでしょう。しかし、職場での自費PCR検査実施に関しては、これから述べるようにさまざまな課題があることも事実です。万一の場合、本当に検査の受診を従業員に求めるのかを、今のうちからよく社内で検討しておくことが重要です。

 そもそもPCR検査とは、そこにウイルスの遺伝子やたんぱく質が存在することを調べるものです。検査で陰性だったのは、「見つけられなかった」可能性もあり、感染を否定することはできません。このため、濃厚接触者やそれに準ずる状況で、「PCRが陰性であれば自宅隔離を解除してよい」という誤解を持たないようにすることも大切です。また、検査結果は従業員の個人情報であり、検査を受けることや結果の提出は強制できないことを理解する必要もあります。

 また、定期的に選手や関係者全員にPCR検査を実施しているJリーグや、参加者全員にPCR陰性であることを条件づけていたアメリカのサマーキャンプなどでも、集団感染例の報告があります。このように、PCR検査が陰性であったとしても感染を完全に予防できるものではなく、感染を拡大させないための対策が常に必要となることを理解しておくことが重要です。

 以上のことを踏まえ、会社としてどうしても自費PCR検査の実施を進めたい場合は、次の点に留意するようにしましょう。

 ○濃厚接触者に認定された従業員については、検査結果が陰性であっても、感染者との接触から14日間は自宅で過ごすようにする。
 ○濃厚接触者に認定されなかった従業員については、あくまでも本人の同意がある場合にのみ検査を実施し、検査結果の会社への提出を強制しない。ただし、検査結果によらず、最後の接触から14日間は健康観察や感染防止策(マスク着用・手洗い)に留意するよう求める(自宅で過ごすことまでは求めない)。
 ○発熱や風邪症状を訴える従業員に対して陰性証明の提出を求めず、症状出現から8日間、および症状消失から3日間が経過するまでは自宅で過ごしてもらう。

〈プロフィール〉
今井 鉄平(OHサポート(株)代表/産業医)

産業医科大学医学部医学科卒業。大手企業での15年以上にわたる専属産業医勤務を経て、2018年4月にOHサポート株式会社を開設、中小企業向けの産業医サービス提供を主業務としている。日本産業衛生学会専門医、医学博士。

「中小企業家しんぶん」 2020年 10月 5日号より