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中小企業振興を軸にした地方分散型社会を

6月15日号の本欄「ポスト・コロナを考える~大都市集中型社会から地方分散型社会へ~」の中で「大都市一極集中から地方分散への転換が進むという議論に注目したい」と述べました。その後も地方分散型社会をめざそうという議論が、さまざまな方面で強まっていると感じられます。

政府も7月17日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針2020)では、「東京一極集中型から多核連携型の国づくりへ」という項目を設けて「東京一極集中の流れを大きく変える」ための政策を提起しています。また同日に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」でも「新たな日常に対応した地域経済の構築と東京圏への一極集中の是正」を掲げ、「強靱かつ自律的な地域経済の構築」などを謳(うた)っています。

地方分散型社会が提起されている背景には、新型コロナウイルスの感染が大都市ほど深刻だという点があります。さらにリモートワーク、オンライン会議などの急速な普及があります。

地方分散型社会の必要性が認識されてきている一方、その担い手としての中小企業の振興を大きな柱に据えようという議論は弱いように思われます。政府の前述の文書でも「スマートシティの社会実装の加速」や「2地域居住、兼業・副業」、「デジタル技術への積極的な投資」などの施策が目立ちます。

本格的な地方分散型社会を実現するための要になることは何か。3年前、京都大学と日立製作所が発表した「持続可能な日本の未来に向けた政策」提言は、発表当時、大きな反響を呼びました。AI技術を活用し、約2万通りの未来シナリオ予測を行い、「2050年に向けた未来シナリオとして主に都市集中型と地方分散型のグループがある」と分析。地方分散シナリオが「持続可能性の観点からより望ましい」とした上で、「持続可能シナリオへ誘導するには、地方税収、地域内エネルギー自給率、地方雇用などについて経済循環を高める政策を継続的に実行する必要がある」と提言しました。コロナ禍で地方分散型社会への論議が盛んになってきている今、再びこの提言が脚光を浴びています。

この提言で注目したいのは、地方分散型社会を実現するためには、地域内での「経済循環を高める」ことの必要性を指摘している点です。地域内経済循環を高めるには、その地域に本社や取引先をもつ中小企業が存在し、その地域に雇用を生み、その地域に経営者や社員が暮らしていること。まさに地域に根ざした中小企業が不可欠です。

「持続可能な日本の未来」を実現するためには地方分散型社会に転換することが求められており、それを推進するためには地域循環型経済の担い手である中小企業の振興を国の政策の中心に据えて取り組む必要がある。新政権が発足した今、中小企業振興を軸とした地方分散型社会のビジョンを明確に示すことを改めて望みたいものです。

(K)

「中小企業家しんぶん」 2020年 10月 15日号より

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