【知っておきたい新型コロナ対策】vol.6 業種別ガイドラインの活用方法

OHサポート(株) 代表/産業医 今井 鉄平(神奈川)

経営者にぜひ知っておいて頂きたい新型コロナ対策情報連載(全10回)の6回目になります。今回のテーマは「業種別ガイドラインの活用方法」についてです。

一般的な感染対策を実施している企業は多いことと思われますが、業種ごとに特殊な業務上の感染リスクを有している場合があり、それらについても各社で対応を検討していく必要があります。

例えば、コールセンターの場合は1つの部屋に大人数が集まり、かつ全員が業務中に話し続け、さらにマイクやキーボードなど物品の共有も多く、業務上の感染リスクが比較的高い状況にあります。これらのリスクに対しては、対面にならないような席配置、業務中のマスク着用、物品の共有を減らすなどの対策が考えられます。

別の例として、運輸業の場合は、長距離移動に伴う感染拡大リスクや、医療機関への搬送が発生する際にはドライバーの感染リスクが高まる懸念があります。これらのリスクに対しては、点呼や搬入など人との接点が生じる場面での感染対策に加え、医療機関など感染リスクの高い場所に搬入する際のリスクアセスメントとどこまで搬入をするか(例:リスクの低い事務室までか、リスクの高い病棟までか)の検討などが対策として考えられます。

このような業種ごとの特殊要因を考える上で、各業界団体が示す「業種ごとの感染拡大予防ガイドライン」は、業種の特性に応じた感染防止策に関する情報を提供してくれる有用なツールです。各企業において、これらのガイドラインをチェックし、対応に漏れがないかを確認することは極めて重要です。

しかしながら、ガイドラインも万能ではなく、各企業の実態に合わない部分、リスクの検討から漏れている部分などもあるかもしれません。例えば、集客型事業のガイドラインの中には、観客における感染防止策に重点が置かれ、バックヤードを含めた従業員における感染防止策が十分に検討されていないものも散見されます。このため、ガイドラインの内容だけを鵜呑みにせず、各企業におけるシミュレーションを通じて、各企業で本当に使えるマニュアルに落とし込んでいく作業が必要となります。

さらに、このようなガイドラインがそもそも存在しない業種も多々見られ(例:葬儀業者、医薬品卸業者、コールセンター)、これらではシミュレーションに基づく企業独自のマニュアルの作成がより重要な意味を持つでしょう。

〈プロフィール〉
今井 鉄平(OHサポート(株)代表/産業医)
産業医科大学医学部医学科卒業。大手企業での15年以上にわたる専属産業医勤務を経て、2018年4月にOHサポート株式会社を開設、中小企業向けの産業医サービス提供を主業務としている。日本産業衛生学会専門医、医学博士。

「中小企業家しんぶん」 2020年 12月 5日号より