平和について考える~76年目の終戦記念日を迎えて

 8月15日は終戦記念日。1939年から1945年にわたって続けられた第2次世界大戦は、全世界を巻き込み、人類史上最大の戦争となりました。世界では数千万人、日本でも300万人を超える貴重な命が失われました。

 第2次世界大戦の終戦から76年が経ちますが、世界各地で内戦や紛争が続いています。世界全体の2020年の防衛費は新型コロナウイルスの感染拡大で経済が大きな打撃を受ける中でも、前の年に比べて3・9%増加するなど軍拡競争が止まりません。紛争や迫害により故郷を追われている人は8000万人を超えています。

 さらに人工知能(AI)を搭載した最新兵器「自律型無人機」の開発、「宇宙軍」の創設、サイバー攻撃など新たな課題も生まれています。

 平和をめぐってさまざまな動きがある中、どのようにすれば平和を守ることができるのか。簡単な課題ではありませんが、過去の全国行事などでの発言の中からそのヒントを探ってみたいと思います。

 中同協議長(現在の会長)を長年務めた庄野慎一郎氏は退任のあいさつの中で中国での戦争体験を踏まえ、次のように語りました。「たくさんの戦友が栄養失調などで死んでいきました。死んでいくとき、みんな目を見て、後を頼むよと言って死んでいきました。敗戦、捕虜となって、私たちは2度とこういうことをしてはいかんぞ、と誓い合って帰ってきました」(1981年、第13回定時総会・兵庫)。戦争体験を語り継ぐことの大切さを感じます。

 第49回中小企業問題全国研究集会(2019年、長崎)で「被爆地の市長として」のテーマで記念講話を行った長崎市の田上富久市長は、ユネスコ憲章の冒頭に「戦争は人間の心の中で生まれるものであるから、人間の心の中に平和の砦(とりで)を築かなければならない」と書かれていることを紹介。「私たち一人ひとりが『平和のためにできること』を考え、行動することが必要」と強調し、「どうぞみなさんの力で平和をつくっていきましょう」と呼びかけました。私たち一人ひとりが平和の主体となることが求められています。

 広島市長の松井一實氏は、世界の都市が加盟する「平和首長会議」の取り組みなどを紹介しながら、「政治的な力の発揮も求められます」と指摘。世界の為政者はいつまでも疑心暗鬼に陥っているのではなく、「人類の未来を見据えて、信頼と対話に基づく安全保障体制への転換を決断すべき」と訴えました。(2014年、第44回中小企業問題全国研究集会・広島)

 平和な社会を築いていく上でも中小企業の果たす役割は大きいものがあります。宮崎大学テニュアトラック准教授(当時。現京都橘大学准教授)の小山大介氏は、グローバル化が進み地域経済が軽視される中、「中小企業の発展を保障し、そのことを通じて地域内に雇用を生み出し、地域経済を安定させ、そこに暮らす人々に将来への安心をもたらすことが、社会・経済の不安定さを取り除き、平和的繁栄を実現するためには決定的に大切」と強調しました(2018年、第50回定時総会・宮城)。

 平和な社会は、中小企業経営や地域経済の持続的な発展のためにも欠かせません。改めてそれぞれが平和の意味などについて学び、考え、行動することが求められていると言えます。

(KS)

「中小企業家しんぶん」 2021年 8月 15日号より