【同友会景況調査(DOR)概要(2021年7~9月期)】景気は再び悪化原材料価格高騰が重要課題に

〈調査要項〉

調査時点 2021年9月1~15日
調査対象 2,245社
回答企業 962社(回答率42.9%)
(建設172社、製造業300社、流通・商業283社、サービス業201社、その他6社)
平均従業員数 (1)39.0人(役員含む・正規従業員)(2)29.6人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが~100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。
 好転・悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考えで作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

足元の景況感は上向きつつあるが、先行きに不安

 9月8日に内閣府が発表した2021年4~6月期の国内総生産(GDP)は年率換算で1.9%増とプラス成長確保はしたものの、コロナ前の2019年10~12月期の水準を1.5%下回るなど、新型コロナウイルス感染拡大の影響で成長率は全体的に低めとなっています。

 日銀の9月短観(全国企業短期経済観測調査)では、大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス18となり5期連続の改善、中小企業製造業は△3、非製造業は△10と依然としてマイナス圏にあります。海外経済の減速や半導体不足などの供給制約が先行きに重荷となっています(図1)。

DORは前期の好転から一転、多くの指標で悪化

 DORでは2020年4~6月期を底に、改善傾向がみられ、前期はプラス水準に浮上する指標も出てきましたが、今期は一転してブレーキがかかりました。ただし、今期も多くの指標の比較対象となる前年同期(2020年7~9月期)は景況が急激に悪化し、上向いてきた時期であったことに留意が必要です。

 業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は11→△4、足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は△5→△12といずれも悪化しています。業況判断DIを業種別でみると、建設業は△7→△8、製造業は21→7、流通・商業は7→△13、サービス業は18→△3と製造業を除いてマイナス水準になっています(図2)。また、すべての地域経済圏、企業規模でも悪化しました。次期(2021年10~12月期)は今期同様の水準、もしくは悪化見込みです。

仕入単価の急上昇で採算悪化要因に

 売上高DI、経常利益DI(両指標ともに「増加」-「悪化」割合、12→2、11→△3)と前期からの反動減、採算水準DI(「黒字」-「赤字」割合)は26→20と赤字の企業割合が若干高まりました。

 2021年に入って急激な上昇を続けている仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は、今期も35→45と10ポイント増、一方、売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は9→11と足踏み状態でその差が開きました。今期は緊急事態宣言下での経済活動の萎縮も重なったこともあり、採算悪化の主たる要因となっています(図3)。

借入金の返済局面に転換か

 設備投資の実施割合はやや減少し、前期に見込んでいた計画割合を下回りました。実施内容ではコロナ禍で旺盛だった「情報化設備」に一服感がみられました。

 また、資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)はわずかに余裕感が失われましたが、高水準を堅持しています。今期は借入金のある企業が減少し、短期・長期の資金とも借入金が減少に転じたことが特徴的です。コロナ禍の借入から1年半が経ち、返済局面に転換したことが示されています(図4)。

雇用面はプラスを堅持も、停滞の可能性

 雇用面では、正規従業員数DI、臨時・パート・アルバイトDI(両指標ともに「増加」-「減少」割合、7→3、1→0)でわずかに減少、所定外労働時間DIもコロナ禍で急落した2020年4~6月期以降増加傾向にあるものの、停滞が見られます。人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は全業種で不足超過が続いています。

環境変化への対応力強化がカギ

 原材料価格の高騰などの影響により、経営上の問題点として「仕入単価の上昇」を挙げる割合が上昇し続けています(13%→27%→33%)。また、「仕入先からの値上げの要請」も連動して上昇しています。特に建設業と製造業でその傾向が顕著です(図5)。

 また、経営上の力点は今期も「新規受注(顧客)の確保」(61→57%)、「付加価値の増大」(48→49%)が2大重点項目ですが、「人材確保」(30→34%)、「社員教育」(38→42%)の割合が増え、組織運営に注力する動きがみられます。記述回答でも一歩ずつ着実に環境変化への対応力強化に積極的に取り組む声も増え、ウィズコロナ、ポストコロナの段階に入っていることを実感する内容も多くありました。

<会員企業の取り組み~記述回答から>

○コロナの影響で仕事がストップになったり、延期になったことが多かった。社員教育、技術研修をすると決め全員で取り組む。有資格者を増やすことで会社のレベルUPと個人のやる気・給与UPにつなげる方針(青森、建設業)
○半導体や樹脂原料の不足やコロナ禍によるサプライチェーン不安定のため、配電・制御・FA機器の入手難となり、長期化している。各メーカーや販売店との協議、情報共有により確保を進めている(岩手、製造業)
○7月頃から受注が増大し生産が追いつかない状況。派遣の技術者を確保したが、とても高額。当面はコスト高となるが何とかしのぐ見込み。受注増大の理由として、今まで延期されていた工事がまとめて動き出した感がある(福岡、建設業)
○事業再構築をとった。5カ年計画の作り直しと、DX化し、データベースの作り直しやECサイトなど、できることへのチェンジと、経費の見直しをする。コロナ禍でいろいろ勉強させられた(愛知、サービス業)
○来年の新卒者の採用が完了し、入社前研修に力を入れている。若い社員が良く勉強しているので、ベテラン社員も影響を受けている。社員の自主性が出てきたため、経営の力点を新規受注や新分野への挑戦へに変えた(東京、流通・商業)
○プレミアムチケット販売により前年同月比売上増となった。新規事業を軌道にのせていく。通販事業をSNSを利用し周知、販売する(新潟、サービス業)

「中小企業家しんぶん」 2021年 11月 5日号より